曖昧な「ちょっと・・・」は丁寧か?

こんにちは。あとテストが2つ残っているにもかかわらず、すっかり春休みモードになってしまっている昼ゼミ2年の鹿野です。
しっかりやり遂げてから春休みを迎えたいものです。

さて、本題ですが、私は後期のグループでも調べた曖昧な言葉に興味があるので、今回は、以下の論文を要約しました。

マスデン眞理子(2012)「曖昧な「ちょっと・・・」は丁寧か? : 言わないことと聞き手の負荷をめぐって」『熊本大学国際化推進センター紀要』第3号、pp.63-75.

A:「今日、飲みに行かない?」
B:「今日はちょっと…」

このように、「ちょっと…」という言葉は、ソフトで手軽な断りとして頻繁に日常的に使われている。
しかし、「ちょっと…」という言葉を使って理由を素直に述べないで断ると、言われた側は「遠ざけられた」と不快に感じることもある。
このことから「ちょっと…」は、使い方を考えないと対人関係を悪くする可能性もある言葉なのである。

この論文では、まず、外国人日本語学習者のための日本語初級テキスト(6冊)で「ちょっと…」がどのように教えられているのかを見ている。

これらのテキストは誘いの断り表現として
1)「ちょっと…」を全く教えないもの
2)「ちょっと…」のような曖昧な断り表現のみを教えるもの
3)「ちょっと…」は意味の理解にとどめ、あえて練習はさせないもの
の3パターンに分けられた。

この結果に対して、マスデンは断り表現の導入では、以下の3点に留意するべきだと述べている。

①「ちょっと…」に断りの表現があることを教えること。
②「ちょっと…」だけで、明確な理由や代案が述べられないと、相手のことが嫌で断っていると思われる可能性があること。
③明らかに失礼な表現(「○○は嫌いです。」「行きたくありません。」など)に対する注意を喚起すること。

一口に日本人と言っても価値観の違いなどにより「ちょっと…」の解釈は違う。それ故、安易な「ちょっと…」の導入は控えた方がいい。

次に、話し手の発話責任と聞き手の負担という視点から「ちょっと」を「思いやりの『ちょっと』」と「逃げの『ちょっと』」の使い分けについて述べている。

「ちょっと…」には、相手に配慮して、敢えて言わない「思いやりの『ちょっと』」と、自分が言いにくいことを避ける「逃げの『ちょっと』」がある。
「遠ざけられた」と感じる一因に、この「逃げの『ちょっと』」も作用しているとマスデンは考えている。
なぜなら、「ちょっと…」と断られた側は諦める以外に仕方がないからである。断る側には使い勝手がいい言葉だが、言われた側は言われっぱなしになってしまうのである。
曖昧な断りは、話し手にフェイスリスクはなく、聞き手ばかりに解釈の負担がのしかかってしまうのである。

マスデンは、「ちょっと…」を使いたくなる場面で、「思いやりの『ちょっと』」なのか「逃げの『ちょっと』」なのかを区別し、
発話の責任の所在を明らかにする話し方をし、発話の責任をとる話し方がますます重要になっていくとまとめている。

この論文を要約して、曖昧な言葉には相手を尊重して、語気を和らげるために使っているものが
相手を傷つけている可能性があるということを確認した。

今回「ちょっと…」を調べてみて、他の曖昧言葉にも興味を持った。
これからも曖昧な言葉について研究していきたい。