「トコロ」の意味と機能

おはようございます。夜ゼミ2年生の齋藤です。来週から車学(こっちではそう言わないそうですね)で車の免許をとってきます。すぐとれるか、不安です。

期限ギリギリに投稿失礼します。
今回はこの論文について紹介させて頂きます。前回のグループワークで「ところ」について発表し、「ところ」について興味がわいたためその先行研究より前の論文について、調べました。
寺村秀夫(1978)「『ところ』の意味と機能」『寺村秀夫論文集Ⅰ』pp.321-336、くろしお出版

この論文では形式名詞について説明で「ところ」という言葉について取り上げ、論じています。また「ところ」が名詞の性質を保持しているかについては、前接の形式(連用修飾ができるかどうか)、後接の形式(格助詞の接続)に注目して名詞かどうか判定しました。
寺村は構文的機能の段階で大きく2つに分けて論じています。
Ⅰ構文で実質的に名詞としての性質を持ったまま使われる用法

(1) ここはコピーをとるところです。
(2) 百メートルほど行ったところに野井戸があった。
(3) 何かあったら、私のところに来なさい。

実質名詞としての「ところ」の用法は意味がおおむね安定しており、上のような「場所」「空間」の一部を表すとしています。構文について見ていくと(1)では「ところ」と修飾する部分の関係が内の関係になっており、この場合は「ところ」がそのまま「場所」で言い換えられます。(2)では、外の関係となっているため、これはできません。また、(3)のように場所を表さない語(私、本、時計など)につく場合「~のところ」となります。

(4) 私はこの本から読みとったもの、わからないところを告げて、ケルケの教えを求めた。
(臼井吉見「事故のてんまつ」)
(5) あたしはね、そそっかしい忘れっぽい男だよ、でもね、今までに嘘は、ひとかけらもついたことがない。ここがわたしのいいところだ。(加太こうじ「落語」)

また(4)(5)の用法を見ると、(4)は空間の一点と取れるが、(5)は人間の性格の一部として使われています。これらの共通点を筆者は「全体の中の一部」とし、「ところ」の用法はその一点に焦点を当てる用法だとしました。
Ⅱところの形式化した用法(接続助詞、文末助詞)

(6) 警察が調べたところ、ポケットに……中略……が入っていた。(新聞)

「ところ」が名詞性を前節との関係で持ちながら、後接では異なった場合がこの形です。(6)は副詞的に後接と関わります。

(7) ニューヨークのあるカメラマンが、ビルの窓から入りこもうとする男を見つけて泥棒と直感、盗んだ荷物を持って立ちせるところまでシャッターを切りつづけた。二十六歳になるこの男、そんなこととは夢にも知らず、カーテンまで閉めて行こうとするところをつかまった。(UPIサン―朝日新聞)
(8) お忙しい所をお邪魔します。

(7)の「ところを」の形はある出来事の一場面に焦点をむける用法として使用されます。この場合、のちに続く動詞は「見る、見せる、描く」などの場合が多いです。(8)の場合などの視覚情報でない「ところを」の場合、通常の進展が遮られたというニュアンスを話し手が含みます。

(9) もともと西洋と日本では言葉のジニアスが違うのであるから、模倣したところで程度は知れたものである。(谷崎潤一郎「文章読本」)

(9)の「ところで」は副詞的に後ろにかかっています。「仮に実現しても不十分だ」という意味で、「~(し)ても」で置き換えられます(ただし、逆に「~しても」→「ところで」はできないものもある)。

(10)「よかったわね。東京だったら、店も何も滅茶苦茶になっているところだわ」

文末の助動詞化する「ところだ」は「~する」「~した」「~している」「~していた」の動詞がつくことで、アスペクトの表す形になります。しかしここでアスペクトを表すのは動詞の形であり、「ところだ」はその中で現在に焦点を当てている。(10)は予想されることに対してそうならないことを表します。