バリエーション研究

こんばんは、テストはあらかた終わったのにインフルが終わらない夜ゼミ2年の平村です。書き間違わないように気をつけたいと思います。

今回私が要約した論文は、『日本語学』より高野照司(2011)「バリエーション研究の新たな展開」です。
卒論では方言研究を調べていこうと思うのでその足掛かりになればということでこの論文を選びました。以下要約です。

この論文ではウィリアム・ラハブがもたらした研究成果を土台とした「バリエーション理論」について、その進化のプロセスを三期(三つの波)にわけることでその歴史を説明し、言葉のバリエーション研究がもたらしえる言語研究の新たな可能性について考察している。

第一の波:言語運用に潜む秩序の発見

ここではニューヨーク市英語における母音直後の(r)の発音における社会階層とスタイルの規則的相関から、そこに「社会的次元」から発生する「規則性」を示し、言葉の変化はその性質上「上からの変化」と「下からの変化」に分類できることを提唱した。

「上からの変化」とは話者自身が言葉の変化が進んでいくことを察知している場合のへんかであり、この変化は先進国において強く推し進められる傾向にある。

一方で、「下からの変化」とは社会的評価がいまだ与えられていない新しい変化であり社会の中間的社会階層が牽引役になりやすい。

第二の波:集団から個へ~質的視点の融合~

ここでは言語人類学や社会心理学といった隣接分野からの知見を利用しながら言語知識固有の要素としての「社会的次元」の定義や解釈をめぐる問題について述べている。

これまでのバリエーション研究では「話者属性」を画一的に定め、個々の話者を特定の社会集団に振り分ける方法が主流だったため、特定社会集団が示す揺れのパターンから逸脱する話者や不変的法則に適合しない話者といった「個人差」をないがしろにし、バリエーションの実態を単純化してしまっていた。

こうした事態を避けるため、質的視点を計量的分析に融合しようとするアプローチが唱えられ、これに関連して、話者属性「性別」を巡る議論も活発化し、社会的に構築される動的な概念として「性」の再解釈が唱えられた。

第三の波:バリエーションが投影する社会的意味の探究

近年のバリエーション研究では言葉の主体である話者の社会生活や心理面など社会的次元への質的洞察を加えることで計量的分析から特定されるバリエーションの持つ「社会的意味」へと進展を見せており、さまざまな実生活要因が複合的に絡み合う動的な社会構築概念として再解釈が行われている。

急速なグローバル化が進む今日の日本社会において地方方言の共通語化は極めて自然な成り行きではあるが、しかしその一方で地域の固有性や土着性を誇示・主張するイデオロギーの芽生えやそれと密接にかかわる地域方言の保持といった地域復興についてはいままでのバリエーション研究では行われてこなかったものである。

筆者は今後の研究課題として方言使用意識や実際の言語運用におけるローカリズムの現れ、それと相乗的にある地方方言保持の可能性について追及するとしている。