日本語の「~たい」を用いた願望疑問文の使用条件に関する一考察

 こんばんは、昼ゼミ2年の陳です。自炊もウーバーイーツも飽きて、とうとう何を食べればいいかわからなくなってしまいました。自由に外食できる日が懐かしいです。

 今回は以下の論文を要約しました。

島千尋(2021)「日本語の「~たい」を用いた願望疑問文の使用条件に関する一考察」『人間文化研究』14、211-243 桃山学院大学総合研究所

 この論文は、「~たい」を用いた願望疑問文について、「聞き手の私的領域」に着目し、願望疑問文の使用条件を新たに提起した。さらに、それが他の意向表現にも同様に見られるものであるかについて可能性を探った。

 島千尋(2021)は願望疑問文の使用条件:「現場性条件」を、

  ・最も「現場性」が強い場合→目上はもちろん、親しい間柄であっても願望を問うことは許されない。

  ・「現場性」がやや弱まった場合→他者が立ち入りやすくなり、親しい間柄なら願望を問うことが許されるようになる。

  ・「現場性」がさらに弱まった場合→より制限が緩和され、親しい間柄はもちろん、目上に対してでもその願望を問うことができるようになる。

以上のようにまとめた。

 また、「現場性条件」は、一般に目上や親しくない聞き手に使うと失礼になるとされている他の文法にも同様に見られるように思われる。「~つもりですか」を一例に、

  (1)(廊下ですれ違った教師に)

     学生:*あ、先生、どちらにいらっしゃるつもりですか。

  (2)(出かけようとしている姉に)

     妹:*あ、お姉ちゃん、どこに行くつもり?

 このように、聞き手の意志決定を問う「何をするつもりですか。」という文は聞き手の私的領域に踏み込むことになり、丁寧さを欠く発話となる。「~つもり」を使った意志疑問文は、相手が目上であろうと親しい間柄であろうと、「現実の、今、この場」での意志を聞く質問としては成立しない。

 ところが、

  (3)インタビュアー:社長は将来はどのような製品をお作りになるおつもりですか。

 例(3)は(1)(2)に比べると相当に許容度が上がるように感じられる。つまり、「遠い未来の話」であれば、目上に対してでも「~つもり」を使って相手の意志を尋ねることができる。

 この論文は対話の「現場性条件」から許容度の差を説明し、日本語学習者としてとても勉強になりました。こうした使用条件は日本語文法における適用性が広いと思い、日本語学習者が日本語をより適切に使いこなすには非常に役立つだと思います。