出会いのあいさつ言葉におけるコードと機能の変化

こんばんは。試験期間目前に所属している部が廃部寸前の事態に陥り、師範・OBの先輩方に振り回されテストどころじゃない夜ゼミ2年の有瀧です。家にもあまり戻れず、ストーブの暖かさやベッドの寝心地の良さなど日常の何気ないものの有難味を今とても感じています。とりあえず体を横たえて寝たいです。

さて、自分は後期、社会言語学について勉強していました。その中でも自分はあいさつの機能やコードの変化について興味を持ちました。この論文もそんな中で見つけたものの一つです。
以下論文の要約です。

倉持益子(2010)「出会いのあいさつ言葉におけるコードと機能の変化」『言語と交流』第13号pp.28-37.

日本語で、人と出会ったときに交わすあいさつは朝なら「おはようございます」、昼間なら「こんにちは」だろう。この二つのあいさつには「おはよう」から派生したおはよう系あいさつと、「こんにちは」から派生したこんにちは系あいさつがある。以下はその二つの系統のあいさつに見られたバリエーションである。

「おはよう」系:おはようございます・おはよう・おはー!

「こんにちは」系:こんにちは・こんちは・こんにちわっす・こんちわっす・ちわ・ちわっす・ちわーす・ちゃす・ちーす・ちっす 等

このことから「こんにちは」系あいさつが「おはよう」系あいさつよりバリエーションを多く持つということは明らかである。
では、なぜ「こんにちは」系あいさつは多様な派生コードを持つようになったのだろうか。

私立大学の一年生を対象にキャンパスにおける午後のあいさつの種類を調査した。
結果は全体的に目上の人に対しては「こんにちは」系が圧倒的に使用され、一方で友人・同級生に対してはその他(よっ、おう等)が目立つが「こんにちは」系の使用は少ない。
これは「こんにちは」というあいさつが出会いを表すコードのため、メッセージ性が感じられなく、親しさを強化する必要がない「ソト」の人に対して使うあいさつだからだと考えられる。

「こんにちは」系あいさつに込める気持ちを比較してみると、指導者には親しみよりも敬意を込めている。敬意は相手と適当な距離を保ち、丁寧でへりくだった態度を表すネガティブポライトネスストラテジーである。指導者に対してはネガティブポライトネスとして「こんにちは」系を使用していると言える。
一方、教師・先輩に対しては敬意と親しみのバランスはさほど変わりはない。敬意を表しつつ、少々くだけた言い方のポジティブポライトネスストラテジーを用いて親しさを感じさせようとする意図が見られる。

「こんにちは」系あいさつが敬意・親しみを表すためにどのようにファティック化(コミュニケーション上の不具合、メッセージ性の弱さなどを解消する目的で形を変えること)を進行させたのだろうか。

①「こんにちは」から「こんちは」「ちは」へ
多少くだけた言い方でも受け入れてくれるだろうという親しみの強化。

②「こんにちは」から「こんにちわっす」へ
新敬語「す」を付けることにより親しさと同時に敬意を表す。

③「こんにちわっす」から「ちわっす」へ
敬意と同時に表す親しさの強化。

④「ちわっす」から「ちゃーす」へ
敬意も表せ、仲間意識を表す機能が強いため、普通の友人関係にも使用される。

⑤「ちゃーす」から「ちーす」へ
敬意はなくなり、友人間の軽いあいさつになる。

このようにファティック化が進行することによって語に備わっていた制限に風穴を開け、新たな機能も加えることができようになったのである。

「こんにちは」が多様な派生語を持つようになったのはメッセージ性に乏しくよそよそしさが出やすいが、午後の出会いのあいさつとしては一番妥当であるため「こんにちは」に敬意と親しさを付加させようとコードが変化したからだと考えられる。

以上です。寒い日が続きますが皆さん風邪には気をつけてお過ごしください。
ありがとうございました。