こんにちは。夜ゼミ2年の広瀬です。この間、雨が降っている日にサンダルを履いて出かけてかなり後悔しました。もうやらないぞと心に誓いましたが、来月には忘れていると思います。
今回要約するのは以下の論文です。
笹井香(2017)「レッテル貼り文という文」『日本語の研究』第13巻4号 pp.18-34(武蔵野書院)
〇要旨
レッテル貼り文を呼び掛け文、感動文にならぶ文の類型として考える。
〇「レッテル貼り文」
(1)仕事のふりして遊ぶな ばか者!
(2)どうかしているのはあなたですわ!恥知らず!
呼びかけ文として運用される名詞は、「話し手から見た関係性において特定の個人を指示することができるという特徴」をもつ。しかし、これらの「ばか者」は「ばか」という属性の人全般を指し、特定の個人を指定しているわけではない。つまり、呼びかけ文として機能していない。
一般的にレッテルを貼るという行為は、レッテル貼り文で「ばか者!」と発する以外にも、「お前はばか者だ!」と発言する事でも行える。しかしレッテル貼り文「ばか者!」はそのような叙述をしておらず、叙述文の省略ではない。つまり、レッテルの内容を聞き手に伝えるのではなく、「ばか者!」と発話することによって、レッテルを貼りつける対象とレッテル「ばか者」とを結びつけている。
→レッテル貼り文とは、聞き手に対する働きかけではなく、対象に対する価値評価に伴う上述の情意の表出のこと
〇レッテル貼り文の形式
<一語に収斂しようとするレッテルの形式>
「役立たず」など、二語以上に分かれていないもの。
<「NP1のNP2」の形式をとるレッテル>
「男の敵!」など、NP2だけでは示すことができないもの。
<二つ以上のレッテルが羅列されているレッテル貼り文>
「この・あの」が含まれるものや、対象を表す呼称が含まれるもの。「その」の用例は観察されない。
<対象を明示する形式を含むレッテル貼り文>
レッテルを貼りつける対象である人を直示的に示す形式であるもの。
〇言語場
レッテル貼り文が観察される言語場は、レッテルを貼りつける対象が言語場にいる場合と、いない場合とに整理できる。
〇私見
レッテル貼り文を形式ごとに取り扱っており、大変わかりやすい論文であると感じた。
そもそもの用例がかなり多く、定義を決めるのが難しい議題なのではないかと感じる。例えば、「月とすっぽん」という言葉があるが、これを相手がすっぽんだと見立てて「月とすっぽんね」と言った場合、これはレッテル貼り文に入るのだろうか。例文を作ろうと思えばどこまでも作れる分、明確な基準を作りにくいのではないかと感じた。