こんばんは、昼ゼミ2年の陳です。休みはコロナの影響でどこにも行けず、引きこもりのニート生活を送りました。
今回は以下の論文を要約しました。
小倉慶郎(2012)「青信号はなぜ緑信号ではないのか:「アオ」の持つメタファーから考える」大阪大学日本語日本文化教育センター授業研究. 10 P.13-P.21
この論文はgreen apple を青リンゴ、green lightを青信号と呼ぶという日本人の言語習慣への諸説を整理し、「青信号」「青いリンゴ」「青い月」という表現に共通する、「アオ」を使うときの日本人の感覚について考察した。
小倉(2012)によると、『日本国語大辞典』、『字訓』、『広辞苑』『岩波古語辞典』から、青と緑が表す主なニュアンスが以下になる:
・接頭辞としての青:色そのものは無視されて、未成熟、未熟というニュアンスが主体になる。
・緑:「新芽」、「瑞々し」
1. 五行説
『色名がわかる辞典』では、古代中国の「万物は木・火・土・金・水の五種類の基本物質からなる」五行説の影響で、日本語の青に緑が含まれているという主張である。「木・火・土・金・水」は色では「青・赤・黄・白・黒」に相当し、季節では「春・夏・土用・秋・冬」にい相当する。
→現代中国語ではgreen lightを「緑灯」と呼ばれているため、日本の色名だけに影響を与えるのが疑問である。
2. 日本語では赤と青がセットになっている説
小松(2001)では、
・アカの反対色はシロ…運動会、吉事
・アカの反対色はアオ…色鉛筆、カビ、鬼、紫蘇、蛙
・クロも反対色はシロ…凶事、容疑、素人/玄人
アカーシロ、アカーアオ、シロークロが対義語としてセットになっていることを指摘した。そのため、青信号は日本語として自然な命名であると考えられる。
3. 青の持つメタファーに着目する説
Stanlaw(1997)は、英語のgreenのメタファーの大半は、日本の青と重なると指摘した。
・green recruit→新入社員(→青ニオ)
・too green to eat→まだ熟していないから(青くて)食べられない
・your face looked pretty green→顔が真っ青
以上から、日本人が交通信号を青と呼ぶのは「開始」「新鮮さ」という概念に目配りしていたという可能性があると考えられる。
青、緑、greenの用法を検討したこの論文から、色彩感覚における日本語と他言語との違いと共通性が見えたと思います。幅の関係によって割愛した部分には日中韓では「青」を使用したメタファーの比較に触れた部分も少しあり、各国の異なる色彩感覚にもとても興味深いと感じました。