こんにちは、こんばんは、おはようございます。夜ゼミ3年の田上です。みなさん健康にはお気をつけください。
今回は以下の論文について要約しました。
臼木智子(2008)「雑誌の片仮名表記—基準から外れる表記について」 国学院大学大学院紀要, 文学研究科 40, 265-280,
この論文で筆者は、現代日本語では片仮名表記が様々な形で文章に用いられており、外来語だけでなく、漢語や和語などの片仮名表記も多く見られることに注目しています。そこで臼木は外来語以外の片仮名表記の実態を明らかにするために雑誌を対象に調査を行い、用例数の変遷と外来語以外の片仮名表記の使われ方について考察を行っています。
片仮名表記の基準
臼木はまず片仮名表記の基準として、文化庁が示す「国語表記基準」や出版社や新聞社が独自にしてしている表記の基準を参考にしている。その基準をまとめると、外来語と外国の地名、人名は片仮名で表記するのが文化庁、新聞社のどちらの基準でも一致している。しかし擬態・擬声語などについては平仮名表記とする基準、片仮名表記とする基準が存在している。臼木は、外来語と外国の地名、人名を除いたものを「外来語以外」と呼び、外来語以外の片仮名表記についての考察を行った。またこの論文では、片仮名表記を正式名称とする人名、店名、映画や漫画の題名は外来語以外に含めていない。
調査
臼木は前述した「外来語以外」の片仮名表記の用例を集めるために、『キネマ旬報』『サンデー毎日』『週刊朝日』『婦人公論』『文芸春秋』の雑誌5誌と『CanCan』『SEVENTEEN』『non-no』『荘苑』の女性向けファッション誌4誌を対象に年代ごとにおける片仮名表記の用例調査を行った。この調査で雑誌5誌で4500文、ファッション誌4誌で2400文の用例を集めている。
※雑誌5誌は1926年から10年ごとに1冊ずつ、ファッション誌4誌は1981年から5年ごとに1冊ずつ資料としている。
結果と考察
まず雑誌5誌の用例調査の結果は1950年1960年代と全用例ののべ数は増加し、一旦は減少したものの再び増加をつづけている。しかし外来語以外の用例数は1980年代を境に減少している。この結果を受け臼木は、1980年代以降に限れば外来語以外の片仮名表記は多用、多様化しているとはいえない。むしろ用例は減少傾向にあるということが出来る。また外来語を含めた片仮名表記全体についてものべ数の増加に異なり語数が比例しなくなってきていることから、記事の中で同じ片仮名表記が繰り返し用いられていると考えられ、片仮名表記の多様化は近年収束しつつあると推測している。
次にファッション誌の調査の結果だが、全用例数、異なり語数の増減の傾向は雑誌5誌の結果と近似している結果になった。またファッション誌でも全用例ののべ数の増減に関わらず異なり語数が横ばい状態であることから雑誌5誌同様に同じ片仮名表記が繰り返し用いられる傾向にあると臼木は述べている。
片仮名表記の使われ方については、文末詞の「ね」「な」「よ」や長音、促音、撥音を片仮名表記する用例があるが、どの用例も1996年ごろから減少傾向にあり、文末詞の片仮名表記は現在では使用されない傾向にあると述べている。また表記の基準により表記法が分かれていた擬態・擬声語の片仮名表記は資料とした範囲の中では擬態語は平仮名、擬声語は片仮名で表記するなどといった厳密な書き分けは見られず、擬態語擬声語どちらにも片仮名表記を確認している。年代による用例数の変化を見ても調査した年代全ての年代で用例を確認でき、長期間に渡って片仮名での表記が続けられていることがわかった。それに加え、前述の文末詞や長音、促音等と違い減少傾向もなく、片仮名表記が多く用いられていることもわかった。
まとめ
臼木は長期間に渡って発行されている雑誌を中心に片仮名表記について用例数の変遷を見るとともに、外来語以外の片仮名表記を主とした考察を行いました。限られた範囲での調査なので、より多くの資料を用いた調査が不可欠ではあるが、今回調査対象とした範囲では1986年以降、外来語以外の片仮名表記が減少し続けているということが明らかになり、外来語を含めた片仮名表記全体についても同じ表記が繰り返されることが増え、片仮名表記の多様化は収束しつつあると臼木は結論づけています。