昼ゼミの石川です。
私は米川明彦の「若者ことば研究序説」を要約しました。内容は次の通りです。
1.若者ことばの定義と特徴
若者ことばとは、中学生から三十歳前後の若い男女が仲間内で娯楽・会話促進・連帯・イメージ伝達・隠ぺい・緩衝・浄化などのために使う、規範からの自由と遊びを特徴にもつ特有の語や言いまわしである。その使用や意識には個人差がある。若者語ともいう。
この定義から次の三つの特徴が指摘できる。
1 仲間内のことばということ。若者は青年期心理により仲間を作りやすい。仲間ができれば自然に仲間内のことばができる。仲間内のことばは言い換えれば狭い範囲のことばであり、気楽に話せることばである。ヨソ者と話すと疲れるが、ウチの者とはいくらでも話せる。
2 娯楽や会話促進などのために使うということ。これは若者がその場その時を楽しく過ごそうとする会話の「ノリ」のために使用していることを意味する。楽しければ何でもいいというわけで、ことばが情報伝達の手段よりも娯楽の手段となっている。
3 ことばの規範よりも自由と遊びということ。これは個人の自由を追い求めてきた産物である。なかでも個人の自由をもっとも先鋭的に主張する若者は、服装・持ち物・考え方・行動など、従来の規範から自由になろうとするように、ことばにおいても自由に、悪く言えば勝手に新たに語を作り出し、新たな意味・用法で使っている。規範から自由になれば、ことばが遊ばれるのは当然である。
2.若者ことばの心理的・社会的背景
1 著しい身体的発達・変化によって他人の目が気になり、どう評価されているか敏感になるため、体に関することば、人を見た目で評価することばが若者ことばになって出てくる。
2 青年期は自己を発見する時期であるため、人と比較し、自己に対しても他人に対しても批判的に見ることが多くなり、若者ことばも人をマイナス評価することばが多くなってくる。
3 自我が芽生えるにつれて自己主張が強くなり、拘束を嫌い、自由を求めて親や教師などに反抗するようになる。さらにことばの規範からの自由を求めて新語や勝手な意味・用法の語を次々と作り出す。若者ことばは若いからこそ生まれる世代語といえる。
若者ことばは位相(表現主体が持つ性・年齢・職業・階層・集団という社会的属性、あるいは表現主体が使用する会話や文章という表現用様式、あるいは伝達媒体の種類に基づく伝達様式、あるいは表現主体の心理・言語意識などの特有の様相)の下位分類である社会的位相の中の社会集団のことばである。社会集団はさらに基礎的社会集団(血縁・地縁)と機能的社会集団(政治・経済・文化集団)に分けられるが、後者のことばを「集団語」といい、さらにその中で、若者集団のことばを若者ことばという。したがって、若者ことばは位相語であり、集団語のひとつである。
若者ことばのこれから
1 若者ことばは低年齢化し、幼稚化していく。表現の仕方に変化がみられるであろう。
2 今までよりさらに狭い仲間内に使われることばが増えるであろう。それは暗号化であり、隠蔽化する。
3 メールの普及により、本来口頭のことばである若者ことばに、メールことば、メールの書きことばが増えるであろう。