程度副詞「ちょっと」、「すこし」の量副詞らしさの差異

こんにちは、昼ゼミ2年河野です。
最近は涼しくなって町一帯が金木犀の香りになってはやいなぁと感じます。秋の感じがして私は好きです。

今回は以下の論文のレビューです。

三宅節子(2003)「程度小を表わす副詞の一研究『すこし/ちょっと』を対象に」『日本語・日本文化』29号,115-136 大阪外国語大学留学生日本語教育センター

【本論文の概要 】
本論文では、筆者が程度副詞「ちょっと」と「すこし」に焦点を当て、両者の程度副詞あるいは量副詞らしさと同時に「ちょっと」においてそこから逸脱する部分について分析している。本論文で行われる分析のポイントは以下の通りである。

(1)「すこし」、「ちょっと」の修飾する程度内容
(2)形容詞、名詞と組み合わさる場合

【詳細】

(1)「すこし」、「ちょっと」の修飾する程度内容
ここでは2つの副詞の量副詞らしさを見るために程度内容の8分類を用意し、当該の副詞が修飾する程度内容のあらわれ方をみている。その8分類は以下である。

①出現程度 ②感情程度 ③状態程度 ④時間程度 ⑤距離程度 ⑥その他の程度(体積、面積など) ⑦動作量程度 ⑧分離量程度 ⑨言語量程度

筆者はこれらの分類基準を元に、コーパスを元に各々の分類における出現数と比率をまとめている。その結果、「すこし」は①から⑨までほぼ偏りなく出現しているが、「ちょっと」は④以外の⑤、⑥、⑧で極端に出現数が少ないことが分析された。

次に、否定形式と組み合わさるものとして、本論文で取り上げられた以下の例文を挙げる。

「今はちょっと説明している暇はないわ。とにかく思いっきり前に走って。」

ここにおける「ちょっと」を「すこし」に置き換えると「少し説明している暇はない」となり、文の事柄的な内容がやや変わってくる。
このような事から、筆者は「すこし」の方が程度副詞、量副詞としての側面が強いとの分析をしている。

(2) 形容詞、名詞と組み合わさる場合
本論文で取り上げられた用例を2つ挙げる。

「しかしですな、私のやっておった研究というのは、これはちょっと比類のないほど重要かつ貴重なものであって、このことだけはどうしても御理解いただきたい。」

「このチームはちょっと凄い。」

これらの例の「ちょっと」を「すこし」に置き換えると、どれもすわりが悪くなる。この場合の「ちょっと」は程度副詞としては機能せず、後続の形容詞の語彙的意味を強めているにすぎず、それに対し「すこし」は程度少の程度副詞であるため程度性に制限のある形容詞とは共起しないと主張する。

【結論】
これらの分析を元に筆者は「ちょっと」について以下の点から程度副詞らしくないと主張する。

・程度副詞が共起しないとされる形容詞と共起する。
・否定形式と共起する。
・数量名詞性が希薄である。
・修飾する程度内容に制約をもつ。

【感想】
程度副詞「ちょっと」を同じく程度副詞「少し」で置き換えるという点が私は非常に斬新かつ面白いと感じ、レビューに取り上げました。置き換えることで初めて見えてくる両者の量副詞性の差異に気づけたことは今後の研究に大きく活かせるように感じました。

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