程度副詞「ちょっと」を日本語学習者の視点から

こんにちは。昼ゼミ2年の河野です。最近は小説ばかりでなくビジネス書のようなものも少しですが読んでます。先日は今話題のひろゆきさんの『1%の努力』を読みました。

さて、以下の論文を要約しました。

高野愛子(2016)「程度副詞『ちょっと』をめぐる文体差:日本語学習者作文コーパスから見られる傾向」『語学教育研究論叢』33号、333-355 大東文化大学語学教育研究所

【本論文の概要】
本論文は、日本語学習者の実態を研究する筆者が、「ちょっと」をはじめとする程度副詞の、文体差を意識した使い分けがどのように日本語教育で行われているかを研究したものである。先行研究として挙げられているものに程度副詞全般の研究の先駆けとなった工藤(1983)を挙げており、「すこし」や「ちょっと」は量性の強い程度副詞であることは明記されているものの、文体による差は触れられていないと主張している。筆者は日本語学習者に向けた程度副詞の文体差を視覚化して示す教材の必要性を本稿序盤で訴えている。

【詳細】
JLCTUFS作文コーパスでは、入門〜初級から超級までの8段階の日本語学習者の英作文において、「ちょっと」と「すこし」の出現率を分析している。その結果、「ちょっと」の出現率は初級後半が26パーセントと圧倒的に多く、「すこし」は各段階で目立ったばらつきをもたない結果であるが、上級前半の15パーセントが最も多かった。
この結果から筆者は、「ちょっと」が初級教材で早い段階で学ばれることは、「ちょっと」が持つその文体性が会話表現に近いためであると分析する。その裏付けとして、「ちょっと」の出現率は中級後半から大幅に減少することを挙げている。これはこの段階からレポート、論文らしい文体が導入され、意識化されたためだと筆者は分析する。
対して「すこし」は、上級前半での出現が最も多いことからも考えられるように、その文体性が「ちょっと」に比べ文語に近いためであると分析した。

【結論】
「ちょっと」と「すこし」の間には、日本語学習者の使用頻度からも分析できるよう、口語体と文語体という文体での使用頻度の差の存在が明らかとなった。

【感想】
今回の本論文は、少し視点を変えて日本語学習者の視点から程度副詞を分析したものを選びました。その結果、「すこし」と「ちょっと」の間には私たちが無意識的に使用していても確かに存在する「文体としての差」があることに目を向けられました。今後の研究にも、この「文体差」の観点も交えていければと思います。