現代日本人の食感表現について

こんばんは。夜ゼミ3年の長谷部です。テストも終わり、学校で知人に会うと異常に嬉しくなり挙動不審になる傾向があります。生温かい目で見守ってやってください。

さて今回は、オノマトペが用いられることの多い食感の表現について少し踏み込んでみました。以下の早川文代(2009)の要約です。

まず早川は、現代日本人の食感表現(テクスチャー)の特徴について自身の先行研究から3点述べている。

①数が多い。 日本語445語

②オノマトペの役割 445語の7割はオノマトペである。

③日本人の粘り気・弾力の表現の多さ

早川(2003)

また吉川誠次(1964)の食感表現データと比較し、このような特徴は日本人の食感表現に変化があってできたものと述べている。

・出現頻度が大きく変化した用語があった。

ⅰ.「もちもち」「ぷるぷる」「ジューシー」「のどごしがよい」などは2003年のデータにしか見られない。新しいオノマトペの登場についてはその推測として以下のように述べている。

→「もちもち」...近年のパンや麺の食感の食感の流行。

→「ぷるぷる」...増粘多糖の開発によってゲル状のデザートが登場したこと。

ⅱ.食感表現としては使われなくなりつつある用語。「ニチャニチャ」「ネチャつく」

→付着するような食べ物は好まれなくなってきている。

→「粘い」は語感が古くなり、代わりに「ねばりがある」や「ねばねば」が使われているのではないか。

これらのように、時代による表現の変化には、新しい食品の登場、食感の流行、食嗜好の変化、言葉自体の変化等、いくつかの要因が背景にあると推測できると述べている。

さらに、上記の食感表現の変化の起きた現代(2004)では、年代別にどのような表現の違いが起こるのかデータを取っている。(2004年6月から10月にかけて首都圏及び京阪神地区の男女3533人にアンケート調査(有効票数2437))

・若年者の食感表現

「ぷにぷに」「シュワシュワ」などは低い年齢層で認知度が高い傾向にあった。

「シュワシュワ」は1996年に行った先の調査でも同様の傾向であった。

→「シュワシュワ」は炭酸飲料、「ぷにぷに」はグミやゼリーなど、低い年齢層の食経 験が多い可能性が高いため認知度に影響しているとも考えられる。

「口どけがよい」「もっちり」等も低い年齢層の認知度が高い。

→新しい食品の商品名や宣伝文句に使われる、テレビや雑誌などで頻繁に用いられたりする等の結果から語彙の定着につながったと推測。

・高齢者の食感表現

「乳状の」、「糊状の」のような「○○状の」といった表現が多く見られた。

「ぶりんぶりん」、「かちんかちん」のような表現も同様の傾向。

→「○○ん○○ん」という形のオノマトペは、語感が若年層には受け入れにくいという可能性を推測。

「汁気が多い」、「水気が多い」といった「○○気が多い」と言う形の表現、「かみ切れない」、「芯がある」といった食べにくさの表現も年齢が高いほど認知度が高い傾向。

→語形による要因、食経験の差による要因等が背景にあると推測。

消費者のテクスチャーの認知状況を調査した早川は、日本語のテクスチャー表現が極めて多彩であり、その文化圏、言語圏の食の特徴を強く映していると結論付けている。

参考文献

早川文代(2009) 「現代日本人の食感表現」日本家政学会誌 Vol.60 No.1 pp.69-72

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