自然談話資料にみられる日本語母語話者の「なんて」「なんか」「など」

こんばんは、夜ゼミ3年の古城です。大変遅くなり申し訳ありません。ここのところ肌寒い日が続いていますが、みなさん風邪などはひいていませんか。私は自分が思っているよりも温度の変化に弱いようです。外を歩きやっとの思いで暖かい車内に入れば咳が止まらなくなり、最寄りで下車すればお腹の調子が悪くなるといった具合。寝込むような大ごとにならぬよう気をつけたいと思います。

さて今回私が紹介する論文は、鈴木理子(2003)「自然談話資料にみられる日本語母語話者の「なんて」「なんか」「など」」(『小出記念日本語教育研究会論文集』(11)pp. 59-76 )です。私は文末や文中に現れ、並列以外を表わす「とか」について研究しています。実際の使用例を探していると「なんて」に言い換えが出来そうなものが多数あるとわかりました。似た表現である「なんて」と「なんか」、この論文ではその2つの違いについて考察しています。

鈴木(2003)は、自然談話資料を用いて「なんて」「なんか」の前後の文脈から判断し、大きく以下の3つに分類した。(「など」の分類も試みたが、口語での使用例がなく除外。)

①格助詞、係助詞「ハ」還元型…格助詞や係助詞「ハ」に置き換えられる文。
「なんて」=ガ、ヲ、二、ハ    「なんか」=ガ、ヲ、二、ハ、デ、ノ

(1)○○さん[なんか/が/なんて]、こないだ署名に犬の名前書いてたから。
(2)だめですよ、風邪[なんか/を/なんて]ひいちゃ。

この分類の「なんか」はほとんど「なんて」にも置き換えられ、逆も可能である。「デ」「ノ」は「なんて」では例が見られなかったが、置き換え可能である。

②引用の助詞「ト」類還元型…「ト」に置き換えられ、後ろに「言う」「思う」などの引用
動詞を伴う文。

(3)(略)、友達にあれは見ようね[なんて/と/??なんか]いっててね、ついに見ないうちに終わっちゃった。

3分類で「なんて」が最もみられたのが引用で、61例中47例が引用として使用されていた。一方「なんか」の例はほとんどみられず、置き換えもできないことから「なんか」は引用のかたちでは使用されにくいとした。
また「なんて」の引用部が進行中の会話より前にあった発言の場合や、他者の発言である場合は引用動詞の使用率が高い。しかし文末が「なんて。」の文は、話者が発話しながら引用の形に変えている可能性が高く、これを「疑似引用」とした。

③新規挿入型…取り除いても成立する文。

(4)みんな、やっぱりアパート[なんか/φ/??なんて]に住んでますからねぇ、(略)
(5)でも間違えて机をさげちゃったり[なんか/φ/??なんて]すると大変ですよ。

以上から、引用の「ト」で表わされるような時は「なんて」が使用され、助詞の代わりに用いられている時は「なんて」と「なんか」に互換性が生じ、③のように助詞が後続している文では「なんか」が使用されることはないとした。
 またこの論文で使用した談話資料には「など」の使用例がなかったことから、「など」は話し言葉では用いられにくいとしたが、発話場面や会話相手との関係等社会的要因も加味した分析が必要であると述べた。

 鈴木(2003)で使用した自然談話資料『女性のことば・職場編』では否定的な言葉との使用が「なんて」が61例中9例、「なんか」が59例中2例と少数であったことから、従来の否定と共起しやすい説とは違う結果になったとしています。しかし職場という公の場面ではあまり否定的な話をしにくい心理状況から出にくかったと考えると、否定との共起が少数であったというのも当然の結果であると考えられるのではないでしょうか。
引用の用法を持つ「とか」に「なんて」が近い表現で互換が効くのは納得がいくが、(1)や(2)のような「なんか」は「とか」のもつ引用とも相手に押し付けないためにやわらげる直示軽減の用法とも異なるように感じたので、その点を今後の研究に生かしたいです。

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