「全体化」と「類化」  2年中村里奈

みなさんこんにちは。昼ゼミ二年生の中村里奈です。ここ一週間、東京でもグッと冷え込み体調管理が大変な時ですね。徐々に春休みに入った方も多いことかと思いますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか? 

さて、今日私が紹介するのは『「全体化」と「類化」-並列助詞論、特に「と」・「や」を中心としてー』というもので筆者は柏木成章氏です。私は後期で並列助詞「とか」について考察しました。この論文は後期で私が見てきた並列助詞の分類について新しい視点で述べており、今後の研究にあたり参考になればと思い読むことに決めました。

 柏木は並列の機能を果たすものとして「と」「や」「、」「・」をここで挙げており、「と」を全体化、「や」を類化として差異化を図っています。一方で「とか」に至っては、この「全体化」や「類化」が適用されないものとして問題提起し、「口頭語的用例」という言葉で表わしました。

(1)  だからしょうがないから数学とか(・・)勉強してさ、少し物理分かるようになったけど…

上に示した例で「とか」は名詞句を並列しておらず、独立的に用いられています。「とか」に関して、筆者は先行研究について具体的に述べていませんが、この用法を、

 すなわち、「とか」以下も、この観点よりすれば、「全体化」と「類化」の概念の何らかの形での適用によって解かれなければならないと考えられるが、その場合の一つの示唆は、やはり、これらの「口頭語」性、話しことばに存するものと考えられる。つまりこれらは、「全体化」・「類化」の原理を、「と」や「や」のように、いわば荘重・厳格に体現するというより、話し言葉の軽快性・実用性・感情性にふさわしいような形で、「気軽」な形で上述の原理を用いているのではないか。

と分析しています。また、日々変化する言葉をいちいち(・・・・)完全・厳格に分類する厄介さを批判する一方、差異化を図るなら「全部/一部」「列挙/例示」「全体/類」の含蓄に付ついて徹底的に把握する必要性がある、というのが筆者の考え方です。

 この論文では最初、文語調における並列助詞について言及しています。そして論文中で筆者は11項の生教材から「と」「や」「、」「・」「とか」の使用実態を考察しており、その結果より「とか」は用いられることが少ないとしています。しかし筆者が問題に挙げた「とか」は口語調で用いられることが圧倒的に多いはずです。よって今回は調査対象となったデータが口語データでないことを考慮していないように思いました。

 用例を多数挙げているにも関わらず、ひとくくりに「話し言葉性によるものだ」としているのは分析が甘いです。

この論文で中心命題となっている「全体化」「類化」という概念は、私が研究している話し言葉中の「とか」において、一つの分類基準として使える気がします。バックラウンドを踏まえた意味的要素の観点による分類を今後の方針とし、ますます「とか」の新用法に付いて具体例を用いながら考えていきたいと思います。

以上が論文の要約、自分なりの考察です。このような形式で論文要約を行うのは初めてだったので、至らぬ点がいくらもあるかと思います。みなさんの投稿も参考にしながら今後はもっと分かりやすい要約が投稿できるように努力して参ります。

それでは皆さま、よい春休みを!

参考文献

・柏木成章(2006)「「全体化」と「類化」-並列助詞論、特に「と」・「や」を中心として-」『大東文化大学別科論集8』pp99-pp107