程度副詞「ちょっと」の派生-語用論の視点から-

こんばんは、昼ゼミ2年の河野です。夜分にすみません。これが最後のレビュー投稿です。
春から引越しのバイトをしているのですが、この時期は暑くて本当にしんどいんです。エレベーター無し4階建てアパートの4階なんて最悪です(汗汗)。重い荷物を持って階段上っては降りて、もう干からびちゃいます。
最近は少し涼しくなってきましたが、まだまだ皆さんも熱中症には気を付けてください!

さて。今回は以下の論文のレビューです。

劉 亜髄(1999)「『ちょっと』についての一考察」文学史研究 40号 32-38 『文学史研究』

【本論文の概要】
本論文は、「ちょっと」、「ちょっとした」の程度副詞としての基本的な用法を踏まえた上で、それが派生した語用論的な用法について分析している。分析のポイントは以下の通りである。

(1)程度副詞から派生した意味の「ちょっと」
(2)否定とともに使われる「ちょっと」
(3)程度がそれほど低くない「ちょっと」

【詳細】
(1)程度副詞から派生した意味の「ちょっと」
「ちょっと」は一般的に程度が低いことを表す程度副詞であるが、それが派生して生まれた用法を分析するにあたり、筆者は以下の例文を挙げている。

「ちょっと伺います。ここはもともと古本屋さんじゃなかったですか?」

ここでの「ちょっと」は、具体的な数量や程度の大きさを指しておらず、この「ちょっと」を使うことにより話し手が聞き手に働きかける何らかの配慮が含まれていると分析しており、語用論の気配り原則に当てはめることができると分析している。

(2) 否定とともに使われる「ちょっと」

「あのう、ちょっとよく分からないんですけど、、、。」

A「今晩一緒に飲みに行きませんか。」
B「今日はちょっと、、、。」

上記の内容は、否定とともに使われる「ちょっと」の例として本論文で挙げられているものだ。ここでの「ちょっと」を筆者は、語用論の「是認の原則」に当てはめて分析している。話し手は聞き手の非難をできるだけ最小にするために、「ちょっと」を用い、相手にとって望ましくないことのマイナスの程度を控えめにしている。

(3) 程度がそれほど低くない「ちょっと」

「彼はちょっとした有名人になった。」
「新しく始めた事業が成功し、M氏はこの一年でちょっとした財を築いた。」
「ちょっといい男前ね、いくつくらいかしら。」

これらの例文での「ちょっと」、「ちょっとした」は、『現代副詞用法辞典』によると「かなり」の意味である。しかしこれらの「ちょっと」、「ちょっとした」を「かなり」で置き換えることは、やや無理があると筆者は述べている。そのため「ちょっと」、「ちょっとした」は、程度がそれほど低くはないが、決して高くもない表現にも使用されると筆者は分析している。

【結論】
「ちょっと」は、程度が低いことを表現する本来の用法から派生し、相手にとって望ましくないことを言う時や相手の非難をできるだけ最小にする時の配慮や気配りの手段として使用される用法も存在すると筆者はまとめている。中には「ちょっとした」のように程度が低くもなければ高くもないことを表すことも可能であると筆者は結論づけている。

【感想】
本稿は「ちょっと」について語用論の観点から本格的に分析した論文であり、ポライトネス理論の観点などから程度副詞の派生を自分の中で整理することが出来ました。個人的にこの派生した語用論的な用法に興味がかなり出てきているため、これからどんどん語用論から程度副詞を分析した論文を読んでいこうと思います。

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