接続詞「だって」の談話における機能

こんにちは。昼ゼミ3年の狐塚です。寒いですね。最近いつのまにかこたつで寝てしまっていることが多いです。なんででしょう、妖怪かなんかの仕業ですかね?わたしはふとんに行きたいのに…!

さて、わたしが紹介する論文はこちらです。
嶺田明美・富田由布子「接続詞「だって」の談話における機能」『學苑』 pp.29-A41
わたしは現在大学生がよく使用する「ゆうて」という言葉の研究をしています。ですから、談話標識(ディスコースマーカー)に興味があり今回この論文を選びました。

まず「だって」の意味について先行研究で述べられていることを交え説明する。
「だって」は相手に叱咤されたときや、非難されたときの言い訳の場面で多く用いられる。この「だって」の意味として理由説明だけでなく、正当化を含むことが予想できるという。メイナード(1993)は「話者が自分の立場を弁明し、正当であると理由づけする、つまり『自己正当化』していると考えられることができる」という。またメイナード(1993)は、「だって」を談話標識として解釈した。前情報や共通の話題をX、「だって」に続く表現をY、とすると[XだってY]では話者が、相手が『反対』または『挑戦』した、またはする可能性があると認められるコンテクストで、自分の立場を正当化する意図を前もって知らせる役目をする」と述べている。

一方、蓮沼(1995)ではXがYに必ずしも先行しないと論じ、「[OけれどもP(なぜなら)Qだから]で示せるような3項の関係づけに関わる機能を基底に有する」と述べている。

また、沖(1996)は上記の参考文献を踏まえ、「だって」に必ずしも逆接の関係がある訳でないと述べ、「相手側の事情を考慮・推測した理由述べ」として働く「だって」の「新用法」があると述べた。それは、「だって」が正当化するのは自己だけでなく他者にも及ぶということであり、「対立する立場=聞き手」ではないということである。

次に「だって」と文末表現の関係について述べる。
「だって」と共起する文末表現の中で1番多く見られたのが「~じゃない(じゃん)」であった。「~じゃん」や「~じゃない↑」は話し手と聞き手が情報を共有している場合に用いられる。「だって」の文末で「じゃん」を用いることで、支持する立場の正当化を図り、共有する話題に念を押したり、確認要求したりする働きがある。「だって」の理由説明をするので、共起されやすい。

続いて多く見られたのが、「~もの」「~もん」である。これらは、話し手が、自分の態度・判断を正当化する根拠を示し、相手に抗議する気持ちを表す。「~することが一般的だ」という意味合いを含むことによって「仕方ないでしょう?」と言外に表わし、自分の発言や立場を正当化している。主観的根拠しかないとわかっていながらも、対立相手に自分の立場を認めてもらいたいという甘えが出ている。

つぎは「~(だ)から」という文末表現である。「だから」は原因・理由を表す接続助詞で
「だって」の基底機能である理由説明に呼応した表現だ。「だって~(だ)から」では必ず正当化の根拠として聞き手にとっては新情報となる事柄が持ちだされる。しかし、話し手は聞き手にとって情報が新情報であることを理解しており、正当化が成功することは始めあまり期待しない。その上で新情報により相手の注意を引き、相手が聞きたがるであろう詳細でさらなる正当化をはかる。

この他、話し手より相手の方が情報をよく知っている場合には「~だろう」「~でしょう」の推量、相手の意思を尋ねる余地なく話し手の意思を推し出す場言いに使用される「~よ」、情報を相手と共有しようとしたり、共感を求めたりする場合は「~ね」などが付く。

まとめ・考察
文末表現は「だって」文との正当化を成功させるために、それぞれ効果的に用いられている。つまり、文末表現も話し手の指示する立場の正当化という役割を担っており、共起する文末表現には、聞き手に対して明確な訴えであることを示すことができるという機能が必要である。また根拠として取り上げる情報についての、話し手の自信や情報所有者の詳しさ、情報の所属領域によって使い分けられていることがわかった。
文末表現との呼応を意識したことがなかったため、今後自分の研究に生かしたい

《参考文献》
沖裕子(1996)「対話型接続詞における省略の機構と逆接-『だって』と『なぜなら』『でも』-」(中篠修編『論集 言葉と教育』研究叢書187 和泉書院)
蓮沼昭子(1995)「談話接続語『だって』について」(『姫路獨協大学外国部紀要』8 姫路独協大学外国語学部)
泉子・K・メイナード(1993)「第10章 会話表現の対照 ―接続の表現をめぐって―」(『会話分析』 くろしお出版)