補文標識「の」「こと」の共時的観点からみた使い分けについて

こんにちは、昼ゼミのフェリックスです。提出が遅くなって本当に申し訳ないです。昨日は雪が振りましたね。雪が積もるとテンションが上がります(寒いのあまり好きじゃないけど、インドネシアにはないので、雪を見たら、多分みんな普通にテンションあがります(笑))。3年生の皆さんは就活で忙しそうですね。僕は大学院に行く準備を始めるところです。一緒に頑張りましょう。

さて、今回僕が紹介する論文は秋本瞳(2006)『補文標識「の」「こと」の共時的観点からみた使い分けについて』です。

秋本は今まで紹介してきた論文と少し違った観点で「の」と「こと」の使い分けを説明しようとしています。今まで紹介してきたものはだいたい「の」と「こと」の本質を見いだそうとしたが、秋本はそれを無視し、「命題部分に「gap」があると認められる場合や語彙的に決まっている表現などを除くと、基本的に「の」「こと」のどちらも用いることができるのではないか」といった仮説をたて、この仮説が今回集めた用例(「CASTEL/J BOOKDATA: CASTEL/J CD-ROM2000」の書籍データと「小松左京コーパス」の対話、座談会形式ファイル)にあてはまるかどうかを検討しました。

命題部分に「gap」があると認められる場合として、以下のような例文が挙げられます。
(1) 前人未到の七連覇を達成したのは、今テレビに出ているこの力士だ。
(2) 今回優勝した の/*こと は、前回優勝できなかった。
(1)’今テレビに出ているこの力士が前人未到の七連覇を達成した。
(2)’今回優勝したチームは前回優勝できなかった
また、語彙的に決まっている表現として、
(3) 今回の景気調整過程は大きく3つの局面に分けて考えることができる。(文部省1993)
(4) 3阪神工業地帯、中京工業地帯、京浜工業地帯について、工業生産額とそのうちわけを比較し、分かったことをまとめてみよう。(川田・尾藤・田邊ほか33 名1993)
(5)松本:ええ。それでぼくは小使の給与の問題で弁護して案を通過せしめたことがあった。(KS1025)

検証の結果、全体からgap があると考えられる例、「(~すること)ができる」「(~するの)を見る」など語彙的に決まった表現を除いた用例についてみると、頻度は別問題として、それぞれ「の」「こと」を入れ替えても許容されると述べています。
(6) しかも、輸入抑制要因を取り除くことは、それ自体として黒字を縮小させる要因にもなる。 (文部省1993)
(7) 文化財保護法や古都保存法が定められてはいるが、開発と歴史的風土の保存を両立させるのは難しく、地域の課題になっている。 (川田・尾藤・田邊ほか33名1993)
(8) さいごに『荘子』を例にお引きになって、世の中をあまり機械化してしまうと人間性が貧しくなってしまうのでそれを制御することが必要だろうという問題を提起されたと存じます。 (KS0573)
(9)なぜかというと、もう一つ、深くは知らんけれども、中国文明というものがあることを知っていた。 (KS0707)
(10) つまり、ストーリー主義でちゃんとわかるように作ってしまうのが、いやだったんじゃないか、という気がする。 (KS0526)
以上の(6)と(8)は文体の影響を受けているため、交替させることが許容されないと考えられることが予想される例もありますが、これらの例文は書き言葉的表現は「こと」を好むということを示唆しているのではないかと言っています。

また、慣用的表現から「の」「こと」のいずれかが用いられることが決まっていると考えられる例も見られ、これらを「(~すること)ができる」「(~するの)を見る」のように「語彙的に決まっている表現」として扱っていいとしています。
(11) 用途別にみると、商業地では、オフィスの供給過剰等を背景に東京都区部中心部で著しく下落しているのをはじめ、〔後略〕。 (文部省1993)
(12)〔前略〕個を中心に考えて自分の一代以上のことは考えてもみようとしない方々にとっては無用の記述と強く感じられることであろうことは十分承知している。 (吉田1981)
(13) 安もののフロイディアンを思想界に輩出させたことをもってしても、ここ入れる必要がある。 (KS1109)
(14) 今度のオフィスができたのを機会に、秘書を集めてブレインストーミングさせた。 (KS0927)
(15) むろん気力の衰えもあるが、関節が固まるといったことによって、それまで元気だったものが、ちょっとした病気で寝込んだのがもとで、身動きのできないねたきり状態に陥ってしまいやすい。 (吉田1981)

長々と例文ばかり挙げて、本当に申し訳ないです。このようなテーマなので、たくさんの例文を挙げた方が分かりやすいかと思います。以上にあげた秋本の分類が妥当かどうかは別として、今まで見たことない変わった分類なので、今後もこれを考慮しながら(特に例文を選別する時)卒論に活かしたいと思います。

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