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2月
05

上下関係が会話管理に与える影響–情報提供の「〜んですね」「〜んですよ」を中心に

昼ゼミ2年の青島です。提出が遅れてしまい申し訳ございません。
森メタルのほっこり感で寒い冬も乗り切れそうです。

今回は、生天目知美(2007)『上下関係が会話管理に与える影響–情報提供の「〜んですね」「〜んですよ」を中心に』をご紹介いたします。

日本語の会話において、会話参加者に上下関係がある場合、敬語やデス・マス体などの文体選択だけではなく、会話の展開にも影響を及ぼすと考えられている。
筆者は、上下関係のある会話について、目下の話者の発話権管理(発話順番のコントロール)に注目した。
発話権管理の研究において情報提供は、次の話者が担うべき役割や発話者が明確にならないことからあまり分析されてこなかった。しかし、メイナード(1993)によって、情報提供の文末に「ね」「よ」が付加されることで後続する発話の傾向に違いがあることが指摘された。この論文では特に、その後の発話の展開に影響を与えると考えられる、話者が既に認識した事態を聞き手に提示する「のだ」を含む文を分析対象とした。以降、「のだ」文に「ね」「よ」が付加される形式を、「~んですね」「~んですよ」と表記する。

分析には、初対面で上下関係(学年差)のある、女性で同学部の大学生による、5回分の自由な会話を用いた。
この分析資料から、分析対象の「~んですね」は44例、「~んですよ」は84例収集された。
「~んですね」は9割以上目上の話者が、「~んですよ」は7割程度目下の話者が使うように偏りが見られたことから、目下の話者は「~んですね」の使用を避けている可能性がみられた。
従来「ね」「よ」の選択に影響があるとされてきた情報所有量の観点からは、聞き手が当該情報を知らないことを示す「よ」は回避され、聞き手が当該情報を知っていることを示す「ね」が多用されると予想されたが、この反対の結果となったことから説明できない。
会話の主導権を持つことは聞き手に対する支配的立場を示すと考えられ、この点で待遇と関係があると考えられたため、会話の主導権の観点からの説明を試みた。

「~んですね」と「~んですよ」の後続部分で観察された発話権の管理パターンの特
徴を観察した結果、「~んですね」は、聞き手が最小限の相づちを打つことが多く、話し手がターンを保持し発話を続ける傾向が強い。一方、「~んですよ」は、後続する聞き手の反応や話し手のターン保持のあり方が一様ではなく、基本的には発話権管理には中立的で非関与的であるということがわかった。

次に、「~んですね」「~んですよ」の発話権管理の特徴が談話の展開とどのように関連しているかに注目し、上下関係との関わりを考察した。
目上の話者は話題を導入し展開していく際に「~んですね」を用いながらターンを保持してコントロールしていき、話題の展開上強調したい内容については「~んですよ」を用いて聞き手のターンを誘発する場面とを使い分けていた。一方目下の話者は、さまぎまな展開上の場面で「~んですよ」を用い、聞き手のターンを誘発して会話の展開に聞き手を取り込む様子が観察された。これは、目下の話者も「のだ」文によって話題導入をしたり応答したりすることで、話題の展開に貢献していることを示す。
話題管理の側面では主導権を取りつつ、発話権管理の側面ではより消極的、間接的な態度を示すことが「~んですよ」によって可能になると考えた。

以上のことから、発話権管理において、従来主な指標となっていた情報要求(質問)の会話の他、情報提供の会話においても上下関係の力が見出せることと、「ね」と「よ」の選択は、聞き手と話し手の情報所有量の差によって行われる他にも、会話の主導権を握るという別の側面も選択の要素となりうることがわかった。

この論文を読んで、自分が普段見聞きする「~んですね」の様子を振り返ったところ、この結果は他の会話の場面においても当てはめられることなのだろうか、という疑問を抱きました。
例えば、接客の場面での会話において店員が客の話を受けて「そうなんですね。(間) それでは、この対策なのですが…」や、「こちらの方が安いんですね。(間) で、使いやすくて…」というように、「~んですね」を文末に置く発話を頻繁に耳にします。このことから、「~んですね」が、話し手がターンを保持する役割を持つという一面については納得することができました。
しかし、この場面で言えばお互いに初対面で客が目上、店員が目下の関係になることが多く、論文の分析資料の状況とも近いものがありますが、目下の話者は「~んですね」の使用を避けるという論文の結果には一致しません。
それまで私は「ね」「よ」の選択といえば、「自分が持っている情報量が~」「相手の共感を引き起こすための~」といったような言葉が真っ先に思い浮かんでいたのですが、発話の主導権と話者の上下関係という別の観点の分析を知り、新たな選択の方法が導き出せるのではないかと思いました。
また、このように今回の結果に合わない点もあるため、他の分析資料によってはまた違う結果と考察が導き出されるのではないかと思い、興味を持ちました。

参考文献
生天目知美(2007)「上下関係が会話管理に与える影響–情報提供の「〜んですね」「〜んですよ」を中心に」『日本語と日本文学 』45号 pp.1-18

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