「三角関係」の成立と定着

こんにちは。夜ゼミ2年の広瀬です。定期的に投稿しようと思ってはいても、なんだかんだ別の作業に追われて結局まとめての投稿になってしまいました。秋学期からは計画的に物事を進められるよう頑張りたいところです…。

今回要約する文はこちらです。

清地ゆき子(2010)「恋愛用語「三角関係」と”三角恋愛”の成立と定着―1920年代の日中語彙交流の視点から―」『日本語の研究』第6巻2号pp.46-61(武蔵野書院)

〇要旨

 日本の大正期及び中国の民国初期において、異形同義語として定着した「三角関係」と“三角恋愛”に着目し、成立と定着過程を明らかにする。

〇「三角関係」の成立

 所謂三角関係を表す言葉として、1907年に日本語訳されたイブセンの戯曲Hedda Gabler第二幕では「三角同盟」という語が見られる。ところが1918年に出版された、坪内士行訳『イブセン傑作集 ヘッダ・ガブラー』の「緒言」に「三角関係」が使われている。「緒言」は島村民蔵によって書かれたものである。実はこの第二幕の台詞は、原書やドイツ語訳の役本には、「三角(の)・関係」と表す語が使用されている。島村はドイツ語に秀でていたため、「緒言」を書くにあたってドイツ語訳のHedda Gablerを目にし、「三角関係」と訳した可能性が考えられる。またこの2年前には森鴎外の史伝「椙原品」で「三角関係」が確認できる。これは、鴎外もドイツ語訳のHedda Gablerを目にしたからではないかと推察できる。

〇定着

 1920年以降、小説や評論に使用されるようになる。「三角関係」の意味が完全に定着していなかったころには、「三角関係」の前に「男女の」といった説明がつけられている例が見受けられる。

〇「三角恋愛」の使用

 1920年代前半の新聞記事などの見出しでは、「三角恋愛」という言葉の使用も見られた。23年、24年には本文で「三角関係」を使用し、見出しには「三角恋愛」と表記する記事などが散見された。これは、見出しとしては「三角関係」に比べ、「三角恋愛」の方が意味を理解しやすく、「三角関係」が定着するまでの過渡的な使用だと思われる。

 また、同時期に評論や小説でも見られるようになった。

〇私見

 「三角恋愛」はどこから成立したのかが非常に気になった。私は今まで「三角恋愛」という言葉を聞いた覚えがあまりないのだが、「三角関係」だけではわかりにくいから作られた造語、ということなのだろうか。「三角関係」はドイツ語訳から誕生したもの考えるとして、「三角恋愛」は誰が初めに言い始め、どのように成立したのだろうか。しかし全体として、「三角関係」の言葉の成立や定着がわかりやすくまとまっている論文であると感じた。

 また、私の技量不足で「中国語での成立について」をここに投稿する短い文章でまとめることができなかったので、精進したい。