こんばんは。夜ゼミ三年の依田です。最近暖かくなってきたので、よく散歩をしています。ちょっと寂れた団地なんかを歩いていると癒されます。体を動かしてストレス発散にもなるので、就活に疲れた三年生の方などにおすすめです。
さて、今回は石川 創 2010. 「あいづちとの比較によるフィラーの機能分析」『早稲田日本語研究 第19号』 pp.61-72を要約しました。
この論文では、これまでのフィラー研究について、用法や機能に一定の見解が無い事や、定義が研究者によって異なっている事。またフィラー用法とあいづち表現の違いに関する定義が曖昧であり、研究も不十分である事を問題点として挙げています。そしてフィラー用法とあいづち表現の違いや、フィラー用法の具体的な定義を明らかにするために実際にフィラー用法とあいづち表現との比較がされていて、その結論として「フィラーは自分の都合のみを考えた場合、あいづち表現は相手の都合を考慮した場合に使用される」という違いがあるのでは無いかとまとめられていました。以下では、石川が行った具体的な研究方法や、結論の根拠などについて簡単にまとめていきたいと思います。
まず研究方法についてですが、石川はフィラー用法を「発話中にあらわれる感動詞類」と定義し、それとあいづち表現の用例を収集し、それらの用例を、相手の情報を受け入れる「受容」と自分の発言を受け入れさせる「念押し」の二つに分類して比較をしていました。その結果、あいづち表現では基本的に「受容」の用法で使われているのに対して、フィラー用法では「念押し」の用法が使われているという事が分かりました。
(1)A:レコーダーってどれくらいとれるんですか?
B:これですか?
A:うーん
C:まあ何百時間てとれるよね?
B:そうですねえ
例えば(1)のようなあいづち表現の「うーん」や「そうですねえ」は相手の発言を「受容」していて、それが連続した会話を滞りなく成立させる機能を果たしています。このような受容のあいづち表現は相手に働きかけているもので、これを省く事は出来ないと石川は述べています。
(2)A:で、それでけずる? みたいな感じにする。うん。
それに対して(2)のようなフィラー用法の「うん」では、相手の発言では無くむしろ自分自身の発言を肯定する働きをしています。これは自分の発言を自分で確認することで、相手に自分の発言が正しかった事を「念押し」しているのですが、この場合は相手に働きかけるというよりも自分自身の都合によって使用されるものであると石川は述べています。また自分の都合のみによって使用され、相手に働きかける事が無い機能なので、文中から省く事が可能です。
以上のように、自分か相手か、どちらに働きかける機能を持つかという点にフィラー用法とあいづち表現の違いがあるのだという事が分かりました。そして、用例によってはどちらか一方でしか使えないものもあり、例えば「あのー」や「えーと」などの、常に自分の都合によって(自分の次の言葉を紡ぎ出すまでの間つなぎとして使われるため)のみ使われる言葉などには、使用される場面に制限があるともまとめられていました。
参考文献
石川 創 2010. 「あいづちとの比較によるフィラーの機能分析」『早稲田日本語研究 第19号』 pp.61-72