カタカナ語の使用における中高年者と大学生の比較

こんにちは、夜ゼミ3年の神村です。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。春も近づいてきて、私の大好きなクリームパンの季節となって参りました。皆様もクリームパンをたくさん食べて精気を養ってください。

さて、今回紹介する論文は以下のものです。

杉島一郎(2006)「カタカナ語の使用における中高年者と大学生の比較」『仁愛大学研究紀要4』pp.45-56

□カタカナ語に対する意識調査

杉島は日本語の乱れの一つと言われているカタカナ語の使用において、大学生と中高年者にカタカナ語の使用率を比較する以下の概要の実験を行った。

・被験者(福井県内に限る)

大学生…私立文系大学133名(男61女72) 平均年齢 19.7歳 範囲 18~25歳

中高年者…社会人71名(男44 女27)平均年齢 48.6歳 範囲 34~68歳

・材料

大学生…日本語でも対応可能なカタカナ語270語

中高年者…大学生の選んだ単語を使用頻度によって振り分けた144語(被験者

への負担軽減のため大学生よりも少なめ)

・回答方法

「使う」「使わない」「使うこともある」の3種で回答してもらう。

□  実験結果

杉島は、当初の予想として、文化庁(1999,2000)が出した世間一般の傾向と

同じく、若者がカタカナ語の乱用者と捉えていた。

しかし、結果として、主に以下の4点が注目すべき点として、挙げられた。

・  中高年者の方がカタカナ語を「使う」割合が多いものが多くみられた。

・  全体の約2/3にあたる94語については、中高年者が「使う」としている。

・  大学生との使用頻度の差が5%以上のものが70語もあった。

・  数値で見ると、大学生のカタカナ語を「使う」割合は46.9%、中高年者の割

合は51.7%となった。

大学生より中高年者のほうがカタカナ語をよく使用するといえる。

□  杉島の考察

杉島は、この実験結果と、文化庁の言語意識調査で「日常生活に外来語・外国語を交えることを好ましい or 好ましくない」とした設問に対し、20~29歳で「何も思わない」という回答が多かったことを理由に、「大学生のカタカナ語離れ」という見解を立てた。

ここには文化的背景として、彼らがカタカナ語を珍しいものではなく、もはや日本語の一部として認識しているのではという考えも役立ったといえる。

この論文で面白いところは、従来の大方の予想に反した結果から、「大学生のカタカナ語離れ」という説を確立したとこにあると言えます。「何も思わない」という一見無関心な回答から、その結論まで持って行く杉島の力強さには脱帽ですが、本人も文中で言っている通り範囲が福井県内という非常に狭い点と杉島のいう文化的背景に基づいた見解がやや利己的である点が少しひっかかりました。しかしながら、今後の自分の研究に役立つ論文であり、カタカナ語と若者言葉というこれまでにない視点での研究も進めて行こうと考えました。

[参考文献]

・  文化庁(1999)平成11年度「国語に対する世論調査」の結果について

・  文化庁(2000)平成12年度「国語に対する世論調査」の結果について

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