昼ゼミ3年の石井です。提出が遅くなって申し訳ありません。
さて今回は、高橋すみれ(2009)「悪女の「役割」 少女マンガ「ライフ」にみる少女の「女ことば」」を紹介します。
この論文は、すえのぶけいこによる少女漫画作品、『ライフ』を題材に、フィクション内において「女ことば」を使用するキャラクター、安西愛海がどのような人物として描かれ、また、どういう立ち位置を占めているかを検討した論文だ。
佐竹(2003)においてフィクション内の「~だわ」「~のよ」といった「女ことば」は、「やさしい、おとなしい、かわいい、あるいは、上品な女」などの望ましい「女らしさ」についてのイメージを刷り込んでいるとされている。しかし、『ライフ』の愛海はいじめを始めた頃から「女ことば」を使用するようになっており、佐竹(2003)で示されているような従来の「女ことば」使用とは、その意図が異なっているように思われる。
『ライフ』は学校におけるいじめを題材にした漫画作品である。その登場人物であり、この論文で取り上げられているキャラクター、安西愛海は、はじめ主人公の友人であった。しかし彼女は途中で主人公が彼女の恋人を横取りしようとしていると勘違いし、主人公をいじめるようになる。この、主人公に対して攻撃をするようになった頃から、愛海は「女ことば」を使用し始める。
作中で主人公を攻撃する手段において愛海は、直接主人公に手を下すのではなく、さながら自分が主人公にいじめられているかのように演出し、主人公を間接的に追い詰める方法をとっている。つまり、主人公をいじめている愛海は二面性をもつ登場人物なのだ。
愛海は元々、「~だもん」「~なの」といった、「女ことば」の中でもひときわ「可愛らしさ」や「甘え」の強調されるような、いわゆる「女の子ことば」を多用した話し方をしていた。またそれは、主人公をいじめるようになった後でも、いじめの加害者としての残酷で攻撃的な一面をあらわにするとき意外は、基本的に変化していない。一方、主人公をいじめる策略家としての一面を見せる際には、「女ことば」に言葉づかいが切り替わっている。
しかし、物語が進むと、愛海のそのような化けの皮が剥がされ、今度は一転して、愛海がいじめられる立場になってしまう。皆から無視や非難をされるようになった愛海は、「女ことば」を次第に使わなくなり、感情を荒げた際には粗暴ないわゆる「男ことば」を使っている。
つまり、愛海の「女ことば」使用は、「策略をめぐらし主人公を陥れ、間接的にいじめる残虐な策略家の愛海」という一面と強く結びついた言葉づかいであったのだ。これは、「大人の女」を表す一種の「役割語」だとも言える。
『ライフ』における「悪女」の「女ことば」使用ついては、かつて別の論文で見かけたことがあったのですが、この論文を読んでより詳細を知ることができました。余裕があれば、「女ことば」が「悪女」を示している例が女児向けアニメにもあるかどうか、またそれは経年変化しているのか、調べてみたいと思います。