接尾語「ぶる」と「がる」との比較

こんばんは。昼ゼミ2年滝沢です。成績を見てホッとしたりちょっと悔しい思いをしています。

今回は以下の論文を要約しました。

高田優樹(1995)「接尾語「ぶる」と「がる」との比較」『解釈』、65巻11-12号、pp.12-25

接尾語「ぶる・がる」はどちらも、前接語に形容詞の語幹もしくは形容動詞を必要とし、「そうした素振りを残す」という意の動詞を形成します。しかし形容詞Aを用いて「Aがる」が出来ても「Aぶる」を形成することはできず、同様に「Bぶる」が出来ても「Bがる」は形成できません。「ぶる・がる」の使い分けについての記述はいくつがありますが、どれも明確になっておらず、本論文ではその差異と要因を整理・再考することを目的としています。

※本稿の用例はコーパスから抽出されたものです。

筆者は接尾語「ぶる・がる」の前置詞を➀モノを表す名詞、②サマを表す名詞、③形容詞の語幹、(接尾語「がる」のみ④希望・願望を表す助動詞「たい」)という種類に分け、それぞれでの接尾語の特徴を見ていきました。

「ぶる」についての考察

➀モノを表す名詞に接続する場合

  (1)あまり専門家ぶらなくてもいい。

 (1)では「専門家」が➀群であり「ぶる」が付くことで「専門家でないものが専門家のような態度している様子」が伺えます。しかし本来➀群が表すものは「物として存在していることが認識できるもの」であって、「性質」をも表すものではありません。

つまり➀群である「専門家」に「ぶる」が付くことで「専門家のようなふるまい=(性質)を示す」という意味になっており、性質化が発生していると考察しています。

②サマを表す名詞に接続する場合

  (2)その余裕ぶった態度は、正直、そうとう気にくわない。

  (3)上品ぶった沓などよりも高足駄が似合っている。

 (2)(3)では同様に「ぶる」が付くことで批判的な意味がもたらされています。➀では「ぶる」の性質化があげられましたが、②群はもともと「様子や状態などの性質」を表します。つまりもともと性質を有する②に「ぶる」を後接することで、さらに動作性が強くなり誇張され、ひけらかした状態になります。筆者はこれをネガティブ化と称しています。

③形容詞の語幹に接続する場合

 「偉ぶる」「若ぶる」の二例のみでした。これは三種に分けた用例の中でも極めて低い割合であり、筆者はこの原因を性質化もネガティブ化の働きも持たずにその有様を伝える接尾語「がる」の方が③群に後続しやすいからであるから考え、「偉い」と「若い」だけが接尾語「ぶる」の後接し得るのは、どちらもポジティブな意味をもたらす形容詞であり、動詞化して誇張することでネガティブ化しやすいという②群との共通性があるからだと考察しています。

 

「がる」についての考察

➀モノを表す名詞に接続する場合

 ➀群に接尾語「がる」が後接例は1つも挙げられませんでした。これは③で述べられるように接尾語「がる」は本来認識できないはずの第三者の心情・感覚を明らかにするものとしての接尾語であるため、➀群ではその効果が発揮できず、後接しえないとしています。。

②サマを表す名詞に接続する場合

  (4)わりあい迷惑がらずに親切してくれた。

  (5)猫が殺す鼠や鳥を気の毒がっている。

  (6)面倒がらずに協力したい。

  (7)露子は別に嫌がっていない。

 (4)~(7)はそれぞれ「迷惑」「気の毒」「面倒」「嫌」という心情を表す②群を前接語とし、いずれも「動作主がそのような感情を抱いている態度」が示されており、話者が当該の動作主体ではありません。つまり心情を表す②群に「がる」が後接するものは「話者の視点で動作主体を捉えたもの」であると言えます。

③形容詞の語幹に接続する場合

  (8)彼らが欲しがる薄利の製品AやBも作る方がいい。

  (9)コウモリが僕らを怖がらなくなって…

  (10)しかし、子供はあまり痛がらず…

 (8)(9)では「欲しい」「怖い」という心情を、(10)では「痛い」という感覚を②同様に話者の視点で動作主体を捉えています。筆者は②③から、接尾語「がる」を用いた文は「話者の視点で動作主体の心情・感覚を表す」、いわゆる三者化の働きがあると考察しています。また接尾語「がる」によってなる動詞には「外的要因」があることも特徴にあげています。(8)(9)のように「~がる」は基本的に他動詞であり、目的語が現れます。(10)では直接的な目的語を必要としませんが、潜在的に「痛みを」という外的要因があり、同様に(4)~(7)にもそれぞれ外的要因があると考えられます。

④希望・願望を表す助動詞「たい」に接続する場合

  (11)どんな大家とも会いたがらない。

  (12)あまり触れたがらないが…。

 接尾語「がる」が助動詞を前接語とする例は「たい」のみでした。筆者はこれを、助動詞「たい」は語形および活用が形容詞と同様であること、ある人物の願望(=心情)を表すときに用いられることから、接尾語「がる」の第三者化の性質から見れば当然のことと説いています。

 接尾語「がる」と「ぶる」との比較

最後に「がる・ぶる」のそれぞれの働きと対立する特徴をまとめています。

・接尾語「ぶる」

 性質化とネガティブ化のはたらき。

 ➀群に後接できる。

 外的要因が存在する。

 当該の動詞が自動詞。

 ④希望・願望を表す助動詞「たい」

・接尾語「がる」

 第三者化のはたらき。

 ➀群に後接できない。

 外的要因が存在する。

 当該の動詞が他動詞。

 助動詞「たい」に後接できる。

おそらく自分の読解能力の問題ですが。「がる」における②③での性質に一切の差異が組み取れず、特に違いがあるのか、同じものなのか言及されておらず戸惑いました。「がる」と「ぶる」の前接語をそれぞれ三種に分ける方法はとても理解しやすかったのですが、どちらも数字の表記が同じなのに、それぞれ表しているものが違うという点においては。今後数字の表記には気を付けようと思います。

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