新語発生のメカニズム

こんにちは。夜ゼミ2年の矢内明莉です。
8月から教習所に通い始めたのですが、うまくいけば9月中に免許が取れそうでわくわくしています!

今回私が紹介する論文は
篠崎 晃一(1999)「新語発生のメカニズム」『日本語学』(明治書院)18巻5号 p.18‐24です。

1.新語発生の原理

(1) 混交
意味の類似している二つの表現が接触した時に両者が組み合わさって新語が発生する現象
(例) ヤブル+サク→ヤブク		ナガイ+シバラク→ナガラク

(2) 同音衝突
意味の異なる同音の語形が接触する現象で、衝突の結果混乱を避けるために新語が発生する場合がある。
スイカンベ(西部:酸葉)とスイカンベ(東部:音のしない屁)のうち、スイカンベ(東部)の分布領域が拡大
スイカンベ(酸葉)は新語形スイコへと変化

(3) 中間方言
既存の方言に共通語が接触し、在来の方言と共通語の中間形が発生する。
(例) 関西方言「書かへんだ」+共通語「書かなかった」→「書かへんかった」

2.	意識の関与

(4) 民間語源
語形変化の過程が不透明な場合に、民衆の語源解釈が働いて合理的な語形に変わってしまう現象。
「シャベル」を「先が広がっている」と解釈→「シャビロ」の誕生

(5) 誤れる回帰
言語変化で生じた方言形を元の共通語形に引き戻す意識が過剰に働き、元の共通語形を別の語形に直してしまう現象。
共通語:スズメ → 東北地方:シジメ
(東北地方ではシとスの区別がなく、スをシに変えて共通語形に直す意識がある)
	
(6) 造語意識の消失
コナイの強調表現「キワシナイ」→「キワセン」→関西方言「キヤヘン」
*音声変化の過程で本来の強調の意が薄れる
可能の用法として発生した「ら抜き形」が「カケレル」「ノメレル」などの新たな語形が生まれたのも、造語意識の消失が原因だと考えられる。

(7) 類推
関連性のある他の表現とのバランスを保とうという意識が働くことで新語が発生する場合がある。
 「ウツクシカッタ」「アカカッタ」→「チガウ」の過去形「チガカッタ」?
 (「違う」が形容詞的用法で用いられるため、「美しい」などの形容詞の過去形からの類推から発生)

3.新たな方言の発生
 生活環境の変化によって生じた新たな事象を表す際や、共通語ではその概念を一語で表現できない場合に独自の語形が発生する。
「チンする」:電子レンジが普及した際に発生
「コマツキ(近畿)」「ハマツキ(鹿児島)」:共通語「補助輪付き自転車」の各地での呼び名

4.自分の考え
 ら抜き形の発生について、本文中では造語意識の消失の項目で紹介されているが、可能表現と尊敬表現を区別するために生まれたら抜き形は、新たな言葉ではないが話者に何らかの意図があって生まれたものである。造語意識の消失といった消極的な意識から生まれたものだとは言えないのではないか。

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