昼ゼミ3年の菊島ですこんにちは!
風邪を引いて元気がないです!みなさん風邪やインフルや急性胃腸炎には気をつけてくださいね!
さて私は以下の論文をレポートします。
服部幹雄「情報のなわばりと丁寧さ」(1994)『名古屋女子大学紀要. 人文・社会編』40,pp253-264
服部は、神尾(1990)によって提唱されている情報のなわばり理論の立場から、丁寧さを考察している。情報のなわばり理論とは、言語によって表される情報内容の、話し手、聞き手とのかかわりに関する研究である。神尾は、ある情報が話し手のまたは聞き手のなわばりに属するか属さないかによって、直接形か間接形かの選択が決まってくるという。
情報の属し方によって、以下の4つのカテゴリーが設定される。
A:情報が話し手のなわばりに属し、聞き手のなわばりに属さない
(1)I’m feeling hungry.
B:情報が話し手、聞き手双方のなわばりに属する
(2)It’s a lovely day.
C:情報が話し手のなわばりに属さず、聞き手のなわばりに属する
(3)You seem to be very interested.
D:情報が話し手、聞き手どちらのなわばりにも属さない
(4)X:I’m not sure what time it is.
Y:I guess it’s about 3:00
一般に、A、Cは直接形、B、Dは間接形で表される。
そしてこの原則に違反した場合、丁寧さを欠いた表現となる。
(5)You are feeling hungry.(A違反)
この情報は聞き手の知覚情報なので、話し手のなわばりには属さない。このとき生じる厚かましさとは、相手のなわばりに属する情報を自分のなわばりに属するかのように表現した、すなわち相手のなわばりを侵したことに由来するものだと考えられる。
(6)Professor Brown is sleepy.(D違反)
これはProfessor Brownと特に近い関係にある人は別として、話し手にも聞き手にも遠い場所に位置する情報と言える。これを直接形で表現すると、話し手がProfessor Brownのプライバシーを侵害しているかのような非礼さが感じられる。
以上は、話し手のなわばりに属さない情報を、あたかも自分のなわばりに属するものとして表現した、典型的に丁寧さを欠く表現である。
しかし、逆に、この原則を破ることによって丁寧さが生ずる場合があるという。
(7)I know how hard this is for you.
(8)I seem to know how hard this is for you.
夫を病で失った直後の妻に対して、担当だった医師が発する言葉として(8)は(7)に比べて明らかに丁寧さにおいて劣っている。C違反にも関わらず直接形の方がより丁寧に感じられるのは、聞き手の気持ちを知っていることを話し手が前提とし、またそれを主張することで、両者が協調関係にあり、同じ感情を共有する”仲間”であることが表現されているからである。(8)では間接形の使用によって話し手の前提や断言が弱められる分、よそよそしさ、無関心さが感じられる表現になっている。
この両例により、厚かましさ、権威、プライバシーの侵害などの印象を与える性格を持つ直接形が、その反面、相手に対する感心、思いやりも示し得ることを説明している。
(5)(6)の直接形が非礼にあたる理由の説明として服部は、Brown and Levinsonのポライトネス理論を用いている。この非礼とは”顔(face)”が威嚇されたからであり、人の持つ”消極的な顔(negative face)”すなわち自分のなわばり、領分に対して主張できる基本的権利、が尊重されなかったことに由来しているという。
一方、(7)(8)は弔慰という本質的に丁寧な発語内行為を遂行するものであり、”積極的な顔(positive face)”が関わってくるとしている。これは自分や自分の所有物、自分の考えなどを認めてほしい、賞賛してほしいという欲求を指す。(7)(8)では、話し手と聞き手の間に共通する基盤を断言することで、この”積極的な顔”を満足させている。
逆に、話し手が自分のなわばりに属する情報を自分のなわばりに属さない情報として表現することで、丁寧さを表現することができる。教師が生徒の誤りを訂正する場合があるという。
(9)That’s not correct.
(10)I don’t think that’s correct.
直接形で表現された情報は、それが自己のなわばりに属することを強調するのみならず、聞き手のなわばりには属さないことをも強調する結果になりやすい。間接形によってそのはたらきを緩和している例であるとしている。
おわりに
服部は情報のなわばり関係の原則違反が丁寧さとどのように関わるかを考察した結果、発話の持つ文形が消極的な顔と積極的な顔の両者とからみあって、丁寧さを増したり、減じたりするのに貢献することを明らかにした。
また、訂正に見られる間接形の使用から、文形の選択には発話の会話管理上の機能も大きく関与していることを示した。
以上です!
それでは晩御飯の買い物にでもいくとします。
参考文献
服部幹雄「情報のなわばりと丁寧さ」(1994)『名古屋女子大学紀要. 人文・社会編』40,pp253-264