接尾辞「-ぽい」の新規用法

 こんにちは。最近、会社説明会などでりんかい線に乗る機会が多いのですが、ある駅を通過するたびに、「一体どこの漫画の主人公だろう?」と思ってしまいます。そうです、天王洲アイル。ゴールデンボンバーの5人目にもなれそうな響きですね。共感してくれる人、いると思います。

 申し遅れましたが、昼ゼミ3年の竹内郁美です。
 
 さて、頭を切り替えて本題に入りたいと思います。以下、読んだ論文について簡単に報告します。

梅津聖子「現代日本語にみる接尾辞『ぽい』の広がり」『拓殖大学日本語紀要』 (19), 55-64, 2009.03, 拓殖大学国際部

 「~っぽい」は従来、接尾辞として語幹に接続、独立の語を形成して形容詞のような働きをしていました。しかし、梅津はブログから用例を集め、言い切り形に接続して助動詞のようにふるまう用法が多く見られるようになってきたことに着目しています。

1. 推量として使用されている例

1-1.動詞の言い切り形+ぽい
 (1)なんか、ツキ指したっぽいです。
 (2)スタッフに間違われたっぽい

 (1)は、ツキ指したように指が痛いが、病院へ行っていないため、はっきり診断がされておらず、話し手自身が感覚的に「ツキ指である」と感じているようす。(2)は、イベントにおいて、客としてイベントに参加した話し手が、会場にいた他の人に、イベントスタッフであるかのような扱いをされたことを受けての発言です。

1-2.形容詞の言い切り形+ぽい
 (3)こーいう系の服がSLには少ないっぽいし
 (4)お土産もすげーっぽいです!

 (3)は、「SLという店にはこーいう系の服が少ない」と、(4)は、「どんなものかはわからないが、お土産に普通ではないものを貰える」ということを話し手が感じての発言です。

2. 婉曲の意味を表している例
 
 (5)いつも一番高いっぽいの買ってしまう癖があります
 話し手が買ってしまうものが一番高いかどうかははっきりと言えないため、婉曲表現として「ぽい」をつけている例です。

 このように、事物に対しての話し手の捉え方を表す際に使われる助動詞的な用法がブログ上で多く見られるようになっている背景について、梅津は「もともと『ぽい』が持つ、『外部の状況を、話し手が脳中のある基準と重ねてみて、ずれを感じる気持ち』が根底にあることから、不確かなことを“推量”したり、また不確かさを“婉曲”的に伝える際にも用いられるようである。」と述べています。

おわりに
 ポライトネス・ストラテジーとして使用されている「ぽい」について調べていきたいと思っていたので、今後の研究に役立ちそうな論文でした。また、ブログに限定して使用状況を調査しているところが面白いです。ブログ上での新規用法としての「ぽい」の使用は、使用している人物の年齢や立場にも深く関連していると思うので、これから研究を進めていく過程で、そうしたデータも調査してみたいです。