今年のセンター試験の数ⅠAが死ぬほど難しいと巷で話題ですが、どこがどう難しいのかすら分からなかった文系脳の夜ゼミ2年の小川です。文系バンザイ。スピンアトップ・スピンスピン。
さて、今回要約したのは村田和代の「ポライトネスから見る若者ことばの機能―龍谷大学キャンパス語の分析を通して―」『龍谷大学国際センター研究年報』 4, pp.25-37です。
この論文は、「龍谷大学キャンパス語」の分析を通して、若者ことばの機能をポライトネスの観点から考察することが目的。語の収集には米川(1996:13)の若者ことばの分類を参考にしている。その分類とは、若者ことばは①キャンパスことば・学生語、②OLことば、③若い男性社会人のことばの3つに分けられるとするものだ。「キャンパスことば」とは、一般に大学生がキャンパス内で使用することばで、「学生語」とは、それよりも広い概念で、キャンパス外や学校に関係すること以外のものも指す。本稿で収集した語はそれぞれ両方に及ぶので、「龍谷大学キャンパス語」という名称を使用する。
はじめに収集した語の造語法に見られる特徴を米川(1996)、中東(2002)を参考に分類する。
①省略→語句の一部を省略したもの。一番数が多い。上略、中略、下略、複合語の各要素の後半部分の省略の4つのパターンがある。 (例)英文、日文、卒論など
②合成→語句を補うと元の意味が復元できるもの。 (例)合コン、自主休講、徹マンなど
③名詞の動詞化→名詞等の一部に「る」を付加し、「○○る」と動詞化したもの。全て3拍のラ行五段活用だった。 (例)拒否る、コピる、ブチるなど
④英語を取り入れた造語→英単語をそのまま使うもの、語の一部に英単語を用いるもの、英単語の一部を使った造語、英語の接尾辞を単語に付加したものなどがある。 (例)じもティー、チャイ語、フル単など
⑤語呂合わせ→頭文字を組み合わせたり、オノマトペ等で語呂合わせした造語。 (例)シャカシャカ、チャリ、連チャンなど
⑥イメージからの語→既存の語の持つイメージを利用した語。 (例)大宮マジック、緑の監獄、祇園精舎など
⑦元の意味とは異なる意味で用いられる語→マイナスの意味を持つ語に、元々はプラスのイメージのある語が使用されている場合が多い (例)エース、キックする、ブッチするなど
1~7には、その語を理解するためにその語の元の語やその語の意味を復元するのに十分な既知知識が必要だということが共通している。そのため、話し手は聞き手が共通の既存知識を有していると考える際に、このような語を使用すると考えられる。
次にそれぞれの語が表す対象による分類を中東(2002)を参考に行う。
①龍谷大学に直接関係する語→全体の64%を占める。大部分が龍谷大学の独自の言葉であり、米川(1996)のキャンパスことばにあたる。これらの語を理解するには、龍谷大学について様々な既存知識を必要とする。 (例)大宮マジック、祇園精舎、ラブスペースなど
②日常生活等に関係する語→一般的に他大学の学生も利用しているような語、つまり、米川(1996)の学生語にあたる。どの語も日常生活に深く関わるもの・人・概念等を表す。 (例)オール、コピカ、プリンなど
1と2に共通しているのは、やはり聞き手と話し手が知識を共有しているという前提で、使用、理解されているということである。
以上をまとめると、造語法の特徴は、省略が多いこと、イメージからの語や語呂合わせの語にユーモアな表現が見られる。マイナスイメージな語(概念)をプラスイメージな語で表すなどが挙げられる。これらの特徴は、会話を面白くユーモラスにしたり、発話内容を和らげたりする機能を持っている。またどの造語法に関係なく、話し手と聞き手に共通する既存知識が必要になる。意味対象からの特徴は、学生生活に密接に関わるもの、人、概念等を表現することであり、キャンパス語を使用することは相手との会話を楽しみ、連帯感を得たり、親近感を分かち合う機能があると考えられる。
これらの機能をポライトネス理論から考えると、全てポジティブ・ポライトネスだと言える。つまり、話し手がこのようなキャンパス語を用いる目的は、聞き手の対人関係上の基本的欲求(ポジティブ・フェイス)に配慮していることを表すことで、円滑な対人関係を作り上げ、それを維持していくことにあると考えられる。