感謝表現の使い分けに関与する要因

こんばんは。昼ゼミ3年の鹿野です。
スーツばかりの毎日で気が滅入りそうになりますが、体調にも気を付け頑張りたいと思います。
今回は次の論文を要約しました。

岡本真一郎(1992)「感謝表現の使い分けに関与する要因(2):「ありがとうタイプ」と「すみませんタイプ」はどのように使い分けられるか」『愛知学院大学文学部紀要』第22号、pp.35-44

感謝表現には様々なものがある。日本語の感謝表現に特徴的なのは、「すみません」等の謝罪と共通の表現がよく用いられることである。
この論文ではこれらの感謝表現に何らかの使い分けの基準が存在する事を予想し、女子短大生104名にアンケートを行った。

同性同年代と初対面の年上の人との2種類の相手に対して様々な状況のときに何と返事するかを言葉で記入させ、
さらに、各状況の印象(気楽さ、気分のよさ)などを7点満点で評価させた。

状況は、席を空けてもらう、1万円を返却してもらう、ピアノ演奏してもらう、御馳走してもらう等の19場面である。

今回のアンケートで岡本が着目した使い分けの要因は

(1)状況(感謝すべき内容)
(2)対人関係(相手との親疎)
(3)相手の行動が話し手の依頼に基づいているのか、自発的なものか
(4)恩恵状況と補償状況の区別
※恩恵状況とは、相手の行動が一方的に話し手に利益をもたらした場合
 補償状況とは、相手が事前に話し手に何らかの負債、不利益(例:借金)を与えており、それを修復するために行動した場合

である。

結果では、(1)の状況での使い分けは、相手の負担が大きいと感じられる状況ほど謝罪型が多用され、感謝型が少なくなる傾向が非常にはっきりと示された。
これは、相手が被ったコストへの配慮が謝罪型の使用に結びつくことを示唆していると考えられる。

(2)の対人関係での使い分けは、疎遠な相手に対しては敬語が使われた上で、謝罪型が多用される傾向も見られた。
相手との心理的距離が大きいと、同じコストの行動でもそれを配慮する必要性がより大きくなるためと思われる。

そして今回のアンケートの結果で、岡本は
(3)の依頼に基づいての行動か、自発的な行動かと(4)の恩恵状況と補償状況による使い分けは明瞭ではなかった。としている。

この岡本のアンケートでは、他の研究者がしているように何と返事をするかだけではなく、印象も点数によって評価している点が面白いと感じた。
2.8ポイントの席を空けてもらう状況よりも、6.0ポイントの1万円を貸してもらう状況の方が謝罪型が多用されているなど結果がわかりやすく、面白い。

また、(3)(4)の使い分けが明瞭ではなかった。としているが、
個人的には(3)は相手の行動が自発的なものの方が「ありがとう」などの感謝型が使用され、依頼に基づいている方が「すみません」などの謝罪型が使用される傾向があるのではないかと感じた。
また、(4)は恩恵状況の方が感謝型が使用され、補償状況の方が謝罪型が使われる傾向があるのではないかと考えた。

この2点の使い分けについては今後、更に自分でも研究をしていきたい。

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