フィラー「その」の言い訳的ニュアンスについて

こんにちは。昼ゼミ3年の相川です。
年が明けまして、新成人のみなさんおめでとうございます。自分の成人式からもう1年が経つのか…と、時の流れの速さにただただ驚いてしまいます。あっと言う間に過ぎてしまう一瞬一瞬を大切にして、有意義に過ごしていきたいと思うばかりです。あと、インフルエンザやノロウイルスなど流行っているようですね。加えて、まだもう少し寒い日が続くと思うので、みなさんお体気を付けてお過ごしください。

以下、堤良一(2008)「談話中に現れる間投詞アノ(ー)、ソノ(ー)の使い分けについて」の要約です。

 堤は、複数の先行文献を参考にしながら、アノとソノについてさらに考察をしている。

 まず、定延・田窪は、アノとソノの基本的用法を以下のように示している。
 (1)アノ 聞き手を想定した言語編集であり、名前の検索と適切な表現に二分される
  P(言いたいコト/モノ)→L(語彙・表現形式)
 (2)ソノ 発話形式の編集作業
  L→L´(Lと同じ内容を表す別の語彙・表現形式)

 堤は、Lからさらに別の表現形式を編集しなければならない場合は、より洗練された語彙や表現を用いなければならない場合だとしている。いったん作成したLを参照して新たにL´を編集し直すという作業が必要になると考えられるからである。ソノは特に抽象的な会話で用いられるとしている。相手に誤解を招かないような発話を行ったり、専門的な用語を用いて話したりするなど、より慎重に言語編集を行う必要があるために、LからL´を作る作業が行われ、結果としてソノが発話されるようになるのである。一方、身近な話題を話すような場合はその必要が相対的に少ないので、ソノの使用率は下がると見ている。

 例1 田中さん、実は…その…折り入って相談したいことがあるんですけど…。
 例2 美子さん、あのその…僕はあなたが好きなんです!

 このように、切り出しにくい話題の場合は、言いたいことが決まっていても、それを適切な表現にのせて話さなければ自分が不利益を被ったり、あらぬ誤解を受けたりする。このような場合は、L´を作ろうとすることが用意に想像できる。

 また、アノは、発話の効果を和らげるために用いられることが定延・田窪で指摘されている。アノを使うことで発話形式に気を配っているという態度を表出し、結果として発話のぞんざいさ・さしでがましさを減殺できるとしている。

 例3 あのー、窓を開けてもらえますか?
 例4 先生、あのー、ズボンのチャックが開いてますよ。

 堤(2004)は、ソノにも「言い訳的ニュアンス、言いにくいことを切り出す」効果があると指摘している。

 例5 課長:最近元気がないな。何か悩み事でもあるのか?
      部下:課長、実は、そのー、会社を辞めたいと思っているんです。
 例6 (別の女性と手を繋いで歩いているところを恋人に見つけられた)
    花子:太郎さん、この女の人、誰?
    太郎:あ、花子、いや、これは、その…。

 これを受けて大工原はソノについて考察を進めた。言い出しにくい内容を発話する場合には、適切な表現を用いて、相手を傷つけたり怒らせたりしないようにする必要がある。ソノを用いることで、そのような配慮を話者がしていることを聞き手に伝えることができると考えられる。また、ソノを用いることで、素直に伝えるべき内容Pを、表現形式を複数用意することで、曖昧にしたりごまかしたりしようとするような意図が伝わってしまう。その結果として堤の言うような言い訳的ニュアンスが生じるのだと、大工原は述べている。

 最後に、前回の発表で、ソノの後に黙り込む以下の例文があった。

 例7 夫の浮気が妻に発覚した場面
     妻:これはどういうことなの?ちゃんと説明しなさいよ!
     夫:そ、それは、そのー…。

 「あのー」だと、どういう言い方をしようか長期記憶を参照しながら過去のことを思い出しているニュアンスが出てくると指摘を受けた。また、そもそも「言いにくさ」とは何だろうかという指摘も受けた。そこで今後は、録りためた「徹子の部屋」と「朝まで生テレビ」や、名大会話コーパスを用いて、ソノの持つ「言い訳的ニュアンス」について細分類も加えながら自分なりに実証していきたい。

参考文献
定延利之・田窪行則(1995)「談話における心的モニター機構 ―心的操作標識「ええと」「あの(ー)」―」『言語研究』108、         日本言語学会、p74-93
堤良一(2004)「アノー・ソノー ―談話管理の視点からみた日本語のフィラー―」『第295回岡山国語談話会における口頭  発表』岡山大学、p1-11
大工原勇人(2005)「間投詞「あの(ー)」・「その(ー)」の使い分けと指示詞の機能との連続性」『日本語学会2005年度秋季大会予稿集』日本語学会、p74-93
堤良一(2008)「談話中に現れる間投詞アノ(ー)、ソノ(ー)の使い分けについて」『日本語科学』23、p17-36

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です