フェイス・ワークの観点から見た「なんか」について

こんにちは。昼ゼミ3グループの2年下山千亜紀です。ようやく、後期テストも終わり浮かれています。みなさんはどのように過ごされるのでしょうか?初めて、このような文章を書くのでとても緊張しています。
ところで、今日は以下の論文をレポートします。福原裕一著者の『会話に見られる「なんか」の機能拡張―フェイス・ワークの観点からー』では、フェイス・ワークの観点からみた「なんか」を、意味論的機能と語用論的機能に分けて分類しています。そのなかでも、「なんか」をフィラーとして扱い3つに分類している部分をレポートします。
Aにはフィラーの機能を、Bにはフェイス・ワークについて記しています。
フィラー(1) 「今、適切な言葉を探している。」ことを示す。
A:とりあえず「なんか」と発話することで、今ある自分の発話権を保持する。
B:聞き手の注意を自分に喚起すると同時に、聞き手に発話権を奪われないようにするための、話し相手の保持機能。
例:「あたしは自分はななんか、なんか、その、なんか、それを言われたときは…」

フィラー(2)新たに発話権を獲得することの前置き
A:直前の話題と関連性が保たれている場合は、発話権獲得であるが、直前の話題との関連性がない場合は、新しい話題の導入となる。
B:これからの発話権を獲得したり、新しい話題を展開することを聞き手へ喚起するための、話し手の保持機能となり、聞き手の気持ちを侵害することもある。話し手が沈黙を回避する際にも使用することもある。その場合には、聞き手の気持ちを損ねない。
例:(直前の発話と重なる形で)「なんかあたし、そのまま付き合ったこととか何回かあったんだけど」
例:(沈黙の後)「なんか、俺が思うに、お前はランキングが自分にとって本当に必用なものを選ぶのを邪魔してるってことじゃないの?」

フィラー(3)相手の発話を引用し、それに対する自分の評価を示す。
A:展開されている話題や聞き手、または第三者の発話(発話をそのままの形で引用することに限らず、考えや意見など)を引用し、それに対する話し手の評価や態度を示す。
B:聞き手や第三者に関わるため、前置きとして「なんか」を発話することで形式上引用する内容が「不確か」であることをメタ言語で表現する。事前に「不確かさ」を示す ことで発話責任を回避するための、話し手のマイナスの気持ちの保持機能を持つと同時に、評価の根拠が不確かである以上、結果として話し手の評価が正しくはない可能性を示唆するための、聞き手のプラスの気持ちの保持機能を持つ。
例:「君はさーさっきなんか学歴とりゃいいと思ってるやつは?…だめだみたいなこと言ってたけど…」
今まで読んだ論文の中では、「なんか」を談話標識や若者言葉として見られる特徴を扱っていて、分類された「なんか」の機能が、「ていうか」などの談話標識とどのような違いを持つかについて説明されていませんでした。しかし、フェイス・ワークの観点からみている論文を読んでみて、「なんか」がプラスの作用を持つため、多く使われる可能性があるのではないかと思いました。「なんか」以外の談話標識の作用を調べ、考察してみたいと思いました。

引用文献一覧
『会話に見られる「なんか」の機能拡張 ―フェイス・ワークの観点からー』福原 裕一 東北大学 国際文化研究(15) PP181-195 (2009)