「大丈夫」のコミュニケーション上の特質-語用論からの観点の分析-」

 こんにちは。昼ゼミ2年の芝﨑です。

 あと1週間後には授業が始まるなんて、本当にあっという間の夏休みだったなと思います。

 今回は、以下の論文を要約しました。

遠藤李華(2020)「大丈夫」のコミュニケーション上の特質-語用論からの観点の分析-」『創価大学大学紀要』41号,pp319-342,創価大学、創価大学大学院紀要編集員会、創価大学大学院

 この論文では以下の3点ついて述べられている。

Ⅰ. 「大丈夫」がどのような発話機能において用いられているのか

 図1は、山岡(2008)の発話機能を参考に、「大丈夫」の発話機能における分類を図式化したものである。

 図2は「大丈夫」の原義からポライトネスへの移行のプロセスを図式化して示したものである。

 原義が完全に喪失した【近年見られる新たな用法】は、配慮機能に特化した用法ということである。

Ⅱ. 新たな用法の「大丈夫」はどの程度使用されているのか

 疑問文における「大丈夫」は、親しい人に用いられる傾向があり、平叙文における「大丈夫」は、親しくない人または目上の人に用いられる傾向がある。目上の人に対して許可をしたり、断ったりすることに抵抗を感じる人が多いことから、「大丈夫」を代わりに用いていると考えられる。

 また、「大丈夫」の新たな用法が若者を中心に用いられ、年代が高くなるにつれて「大丈夫」を用いる人が少なくなってきているのは、若者の日本語に対する細かい使い分けが十分にできなくなっていることが要因の一つに挙げられる。若者が「大丈夫」を多用する要因は、配慮としてだけではなく、敬語や言葉の使い方に自信がないため、「大丈夫」という言葉で代用しているとも言える。

Ⅲ. 外国人用日本語教材では、どのように「大丈夫」が扱われているのか

 ほとんどの機能の解説がないことがわかった。《提供》に対する《拒否》は、今後定着する可能性があるため、日本語教材においても取り入れていくべき機能であると考えている。「大丈夫」が表すものは文脈によって多様であり、単純に説明できる言葉ではない。そのため、「大丈夫」を用いやすい場面や文脈を示したうえで、どのような言葉の代わりに用いられているか考えさせ、 「大丈夫」を文相当の機能をもった表現として指導していくべきであることを提言している。

 この論文は、2020年以前にも出されていて、少しずつ研究が進んでいたのですが、元になっているアンケート調査は2017年のものが使われているため、また少し変化があるのではと考えました。

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