「キムタク」愛称語の許容度について

 こんばんは! 夜ゼミ2年の鈴木です。

 夏休みですっかり昼夜逆転してしまい、そろそろ直さないといけないなと思いながら、深夜にこの文章を打っています。

 さて、今回以下の論文を要約しました。

原田龍二(1996)「「キムタク」愛称語の許容度について」『音韻研究 : 理論と実践 : 音韻論研究会創立10周年記念論文集 / 音韻論研究会編』pp.93-94、開拓社

 この論文は、「キムタク」(木村拓哉)のように姓と名の先頭から2モーラの要素を取り出してひとつづきにする愛称語が形成される規則について論じている。

 適当な名簿から抽出した60個のサンプル名をこの愛称語に当てはめ、学生52名に可否を判断してもらった結果から、以下の事実が観察された。

(i) keN,siNのように許容度の高い第2要素が存在し、これを含む場合は許容度の低い第1要素と一緒になっても、全体の許容度をあげる。

例:イトケン (伊藤ケンジ)、ワダシン (和田シンスケ)

(ii) 取り出された2モーラが名前の形態素と一致していると許容度が高い。

例:ヤマケン (山沢ケンジ)

(iii) 第1要素と第2要素の境界で同じ音が連続するものは許容度が低い。

例:イママサ (今井マサヒロ)

(iv) 第2要素の2番目の母音に無声化があるものは許容度が高い。

例:キムタク (第1要素が(ii)に反しているが、第2要素がこれに該当するため許容される)

(v) 許容度には第2要素の性質が大きく影響している。日本語にある種の音声の階層が存在し、それに従って好まれる「語呂」が決まる。また、取り出した2モーラの要素が日本語の形態素の典型と一致すると許容度が高くなる。

(i)で述べたkeN,siNの許容度が高いのは、Nで終わる1音節2モーラの要素が典型的な漢語形態素に該当するからである。また(iv)で述べたものの代表である-ki、-ku、-ti、-tuなども、漢語形態素と一致していることが多い。

 このように「キムタク」のような愛称語形成にはいくつかの規則性がみられたが、全てが守られなくとも一つが従っていれば許容されたり、どの規則に則っているかで許容度が変わったりする。

 自分の意見として、「キムタク」式の愛称語形成において第1要素は(ii)に反していたが、「木村」という姓を持つ人は「キム」という愛称で呼ばれることが多いと感じるため、これらの規則性は他の典型的な愛称形成パターンにも共通するのか否か調べたいと思った。

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