「~てほしい」と格助詞

こんにちは、昼ゼミ2年のフェリックスです。もうそろそろ暖かくなるだろうと思ったら、急に雪が降り、焦り半分興奮半分の気持ちでした。まだまだ冷え込む日が続きそうですね。試験中の人や就活中の人もいるかもしれないが、体調を崩さないように頑張りましょう。今日は以下の論文について簡単に報告したいと思います。

山西正子(2011)「「~てほしい」と格助詞」『目白大学人文学研究』第7号, 165-174

この論文では、現代日本語の「~てほしい」形式において、実際の動作主体を明示するものとして、格助詞「に」のほか、格助詞「が」も一定の制約のもとで使用されていることを指摘する。山西は「手作業」とデータベース『聞蔵』により、「朝日新聞」にある用例(170例)と20世紀の文学作品にある用例(265例)を集めて、「~てほしい」形式とともに使われる助詞にどのようなものがあるかを調べて、そして「が」が使われる背景についてまとめています。

まず、どのような助詞が「~てほしい」とともに使われるのか見てみましょう。山西の「朝日新聞」調査は以下の通りです。
「に」60例、「には」22例、「にも」13例、「にこそ」1例
「で」1例、「では」1例
「が」26例
「は」28例
「も」17例
「こそ」1例

「朝日新聞」調査の結果を見れば、「に」は優勢であるということが分かります。この「に」は「先生に教えていただく」の「に」と同じような働きを持っています。
  例:①これからもより多くの高校生に世界に挑戦してほしい。
そして、組織が動作主体となる場合は「で」を使うことができます。
  例:②(沖縄基地問題について)管政権ではとらえ直してほしい。
「は」と「も」は取り立てし助詞として「~てほしい」とともに使われています。
  例:③ぐずる子にてこずっている母親がいたら、近くの人は手を差し伸べてほしい。
    ④流行の長くゆったりしたマキシ丈スカートを履く女性も注意してほしい。
「が」の用例は次のようにあります。
  例:⑤松山校長は「これを機に、子ども自身が安全に対する意識を向上してほしい」と話している。
    ⑥「社民党が議席を増やして民主党を牽制してほしい」。そんな期待をわき起こしたい。
この現代語調査(朝日新聞調査)には例⑥のように、「その社民党に」が省略されていると考えられる側面もある。

20世紀文学作品の調査は以下のようになります。(265例中、動作主体が明示される例は43例のみ)
「に」19例、「には」5例、「には」1例
「で」1例
「から」4例
「が」4例
「は」6例
「も」3例

20世紀文学作品では「に」、「で」、「は」、「も」は現代語と同じように使われている。「に」の優勢も変わらないです。一方、「が」は用例が現代に比べて少ないということが分かりました。

山西は「~てほしい」形式と格助詞「が」の共起は近年浸透し始めていると推測しています。また、格助詞「が」とともに使われる用例に以下のような傾向があると述べています。
i)実際の動作主体は抽象的概念であったり、非個人であったりする例が多いのではないか。
 例:⑦「〈略〉文学者の中に自然への新たな意識が生まれてほしい」と話す。
ii)また、発話者の期待する状況は、特定あるいは一定範囲の人物の具体的な動作により実現するものではなく、抽象度が高いものである。
 例:⑧(慰霊祭開催を)受け継いでくれる人が出てほしい。
iii)そのような具体性を欠く状況では、しばしば説明要素が多くなるので、「に」の重複を避けるために、動作主体が「が」で示されることになる。ただし、「に」の重複を避けることが最優先され、「が」が使用されるとはいえない。(例⑤参照)
 
以上とは関係ないが、最近、格助詞「が」と「~ていただく」形式の共起もあるということも指摘する。
 例:⑨先生が教えていただく