条件文の分析

こんにちは、夜ゼミ2年の上野です。今年で愛犬は11歳になります。年を取ってくると、犬も人間と同じように、自己主張が強く、食欲が増し、ミニブタのようになってきました。ダイエットをさせなきゃいけないのですが、可愛いので迷っています。

さて、本題に入ります。私は加藤重広(2006)「ねじれた条件節を持つ条件文の分析」『日本語用論会大会研究発表論文集』(2)pp.49-56の論文を要約しました。

 筆者は、条件文には種類があり、基本条件文ねじれた条件節を持つ条件文があると述べています。前者は、前件が導入する世界において前件が後件の成立を左右しているものであり、後者は、前件が導入する世界において後件の成立が左右されないものだとしています。以下、わかりやすくまとめていきます。

基本条件文
(1)学生なら、入場料が2割引になります。
(1’)Xが学生なら、Xは入場料が2割引になります。

まず、(1)のような文を条件「節」としてよいかを検討しています。(1)を(1’)のように解釈すると、前件と後件には同じ不定項が存在しており、前件が導入する「Xが学生である」という世界において「Xは入場料が2割引になる」と見ることができます。つまり、(1)は条件節と帰結節に同じ不定項を含み、その不定項を消去するという形になっており、形式は単文に近く、内容は複文として理解することができると筆者は述べています。

ねじれた条件節を持つ条件文
(2)トイレなら、2階にありますよ。
(2’)Xがトイレなら、Xは2階にありますよ。

(2)の例文を(2’)のように考えてみると、Xには「あなたが探しているもの」が入ると考えることができます。しかし、これは(1)と同じようなことが言えるのかと筆者は考え、(1)と(2)の文を否定文にし、比較してみました。

(3)学生でないなら、入場料は2割引になりません。
(4)*トイレでないなら、2階にありません。

(3)は自然な文章になりますが、(4)は不自然な文章になってしまいます。これからわかることは、(1)と(2)の構造は類似していても、意味的に異なっているということです。「学生である」かどうかが「入場料が2割引になる」かどうかを左右するのに対し、「トイレを探している」かどうかが「トイレが2階にある」かどうかを左右していないことがわかると筆者は主張しています。

 次に、筆者は条件文とポライトネスの関係について説明しています。

(5)寒いのなら、暖房をつけるよ。
(6)寒いなら、暖房をつけるよ。

この2つの例文は、どちらも「寒さを感じると想定される者」が聞き手です。例えば、(6)を「君は、寒いのがまんしてたの? 僕は寒いなら暖房つけるけどね」のような少しくだけた反事実的な文章で考えると、発話者の言葉になります。しかし、「君は寒いのがまんしてたの? 僕は寒いのなら暖房つけるけどね」となると不自然になります。「のなら」の「の」を文末で使われる「のだ」の「の」と同じだと考えると、「のだ」はすでにそうなっていて確定しているということであり、すでにそうすることの判断が終わっているという「判断済み」の意味であると述べています。「判断済み」の「の」に条件辞が付くと、「判断の確認」を相手に要求することになると説明されています。したがって、(5)では相手が寒いかどうかの判断の確認をしたと考えられます。要するに、(5)で「相手が寒いかどうか」ということを相手の代わりに言い、その結果、確定的な判断を有標的に相手に任せることは、相手への負担を最小限にするための発話者の行動であり、Leech(1983)の論文に挙げられている、気配りの公理と寛大さの公理のポライトネスに繋がるものだと筆者は主張しました。

この論文の面白い点は、条件文がポライトネスと関係しているところです。他の論文では、論じられていなく、とても興味深い内容でした。しかし、この論文では「の」と条件辞「なら」についてだけ述べられており、他の助詞や条件辞でもこのようなことが言えるのか疑問を抱きました。使う助詞や条件辞によっては、ポライトネスとは関係のないものもあると考えられるため、今後研究していく必要があると思いました。

参考文献
加藤重広(2006)「ねじれた条件節を持つ条件文の分析」『日本語用論会大会研究発表論文集』(2)pp.49-56

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