新敬語「っす」に見られる男女差

タイトル:新敬語「っす」に見られる男女差

こんにちは、夜ゼミ2年の梅本です。先日学校と国会図書館を徒歩で往復するという謎の行動をしでかし、案の定次の日筋肉痛になりました。電車で2駅なので余裕だろうと思っていましたが…。文明の利器は素晴らしいですね。ところで、今回は以下の論文について要約しました。

永冨 智子(2012)「新敬語「っす」に見られる男女差」『社会システム研究』北九州立大学大学院社会システム研究科 pp.81-90

この論文では「いいっすか」や「俺じゃないっす」などの「っす」について、男女の使用頻度や使用される場面の違いについて研究しています。この「っす」とは丁寧形「です」が変化したタメ口と敬語の中間的な言葉で、相手に対する親愛や親しみと敬意の両方を兼ね備えたものであるとされており、新敬語や中間敬語と呼ばれています。先行研究では「っす」の使用は男性に多くみられ、中でも体育会系の男性が多く使用しているとされていました。また最近では女性の使用も見られるようになり、男女の使用における意識の違いについても研究されており、男性よりも女性の方が意識して使用していることが示されています。しかしこれらの研究はアンケートをもとにした調査であるため、この論文では次のようなテレビ番組を用いて実際の会話における使用例を収集し、男女差について再検証しています。

≪調査対象≫

番組:「グータン・ヌーボー」(4回分)。

内容:タレントやお笑い芸人など44歳~19歳の男性(計9人)と女性(計10人)がカメラを忘れ、仕事であることを忘れてプライベートを過ごす。

≪調査の結果≫

①男性は3人に2人が使用し、女性は3人に1人が使用していた。

②使用回数は男性が37回であるのに対して女性は9回であった。

③男性は目上や目下に関係なく使用していたが、女性は目上と同輩にしか使用していなかった。

この結果から筆者は、男性の方が使用者や使用回数が多いものの女性も使用しており、また男性は年長者から年下まで上下関係を意識せずに使用しているのに対して、女性は年下の者が自分より上の者に親しみや敬意をこめて使用しているという違いがあると言えると述べています。さらに筆者は実際の使用場面に注目し、男性は様々な場面で「っす」を使用しており特別な配慮をして使用しているとは考えられないが、女性は数は少ないものの効果のあるところで使用しており、それらは相手との距離を縮めるためにストラテジーとして用いていると考えられると指摘しています。

この論文の面白いところは実際の会話をもとにしているので、アンケート形式では調査しきれない意識していない場合の使用についても調査できているという点だと思います。そのため、意識の有無にかかわらず女性も使用していることや男性とは違い女性はストラテジーとして用いているという結果が得られておりとても興味深いものでした。しかし、自由な発話をコンセプトにしていてもあくまでテレビ番組であるため視聴者の目を考慮し丁寧な言葉を用いている可能性もあり、男女間の使用回数や使用者の差についてはもう少し検証をする必要があるのではないかと思いました。また、調査対象者には様々な職業の人が含まれているが全員芸能人であり、これまでの先行研究の多くが対象としている学生においても同じような結果になるとは限らないのではないかと感じました。そのため、調査の対象とする人や場面を広げて引き続き研究していきたいと思いました。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です