談話標識「なんか」について

 こんばんは。昼ゼミ2年の芝崎です。つい最近新年を迎えたと思っていたらいつの間にか1月も残すところあと1日となってしまいました。この調子でいくと2014年もあっという間に終わってしまうのではないかと、恐怖を感じています。

 さて、私は最近、会話の中で「なんか」という言葉を頻繁に耳にするなと思いました。そこで、この「なんか」という言葉には何か意味があるのか、また使用される規則などはあるのかという疑問を抱いたため、以下の論文を読み、要約しました。

飯尾牧子(2006)「短大生の話し言葉にみる談話標識「なんか」の一考察」『東洋女子短期大学紀要』38巻pp67-77 東洋学園大学

 この論文ではSaito(1992)を先行研究として紹介しています。Saitoは20代の若者がどのような談話標識を使用するのかを調査し、談話標識(だから、でも、なんか、だって、それでも)の中で「なんか」が突出して多いことを指摘しています。そして、その主な機能として、会話を和らげる、つなぎ語、発話権の獲得を挙げています。そこで筆者は、Saitoの先行研究から10年以上経った現在でも、談話標識「なんか」が若者の間で頻繁に使用されているのか、また、同じ機能や役割を持っているのかについて実際の会話のデータを基に論じています。

 調査方法としては、東洋女子短期大学の2年生5名(この5名は友人同士)の会話を90分録音し日常的な会話のデータを収集するという方法を用いています。
この調査によって以下のことがわかりました。
・「なんか」には強形(「なんかぁ」「なんかさぁ」)と弱形(「な(ん)か」の2種類がある
・「なんか」が一番多く使用されるのは節中であり、次に節頭、節尾と続く
・「なんか」の弱形が一番多く使用されるのは節中である
・節尾において強形が使用された例は一例もない→曖昧さを残しながら発話を終えるため
・節頭では強形と弱形が同じくらい使用される→強形はほとんどの場合発話の順番を獲得するマーカーの役割で使用
 される
・節中と節尾は弱形が中心に使用される
ここでの「節」とは会話文の中で分けられる単位のことであり、大抵1つの情報を持っているものをいいます。

上の調査結果から、筆者は話し言葉における談話標識「なんか」の機能や役割について次のようにまとめています。
①節頭において強形の「なんか」は、次の発言は自分の番であることを他の話者に知らせるマーカーあるいはきっか
 けのような役割
をしている。また、節頭の弱形で使われるときは、強形の場合ほどの強い意志は感じられないにして
 も、前話者の意見の補足や同意的な意見を述べるきっかけとなっている。
②節中で弱形で使われる「なんか」は、主につなぎ語(フィラー)の役割をしたり、発話を和らげる役割をしている。この
 用法の「なんか」が今回のデータの7割を占めていた。
③節尾の弱形「なんか」は曖昧に会話を終わらせるときに使用される。これは「~だ」と発話を言いきらずに終え、その
 後を誰かに委ねるという役割を持っている。
以上のように「なんか」における機能はSaitoの研究と大きく変わったところはなく、多様に変化し続ける若者語の中でも、談話標識というのはあまり影響を受けない分野なのではないかと筆者は考えています。
 
 この論文の面白い点は、「なんか」を強形と弱形という発音方法によって分類したことと、節の中のどの部分で用いられているのかに着目している点です。また、今回データとして用いられた会話では「なんか」が100回以上用いられており、普段無意識のうちに多用していることに驚きました。日常会話を用いたからこそ、発音や使用回数などのデータを得ることが出来たので、今後自分の研究の調査方法の参考にしていきたいです。

引用文献
Saito,Makiko(1992)  A Study of the Discourse Marker Nanka in Japanese. MA Thesis.Michigan State
   University

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