程度副詞「とても」の肯定用法―「表出」について―

こんばんは。こうなることは課題発表のときから分かっておりました、夜ゼミ2年加藤(聡)です。ゼミ長ではない方です。締め切りをぶっ飛ばす勇気も出ないので、日付が変わらないように祈りながらタイピングに励みたいと思います。セイッ!

では今回は以下の論文を紹介していきます。

森下訓子(2004)「程度副詞「とても」の肯定用法―「表出」について―」(同志社女子大学大学院 文学研究科紀要 第4号 p53-67)

この論文では、「とても」の類義表現である「非常に」と「たいへん」に目を向け、この3つの語の使用される場面、付属する語についての調査・比較を行い、最終的には「とても」の肯定用法の感情表現の特徴を捉えることを目的としています。

(1)東西のハイサイドライト(採光窓)から部屋の奥まで日が注ぎ、{とても・非常に・たいへん}明るい。

(2)「{とても・非常に・たいへん}疲れた。3回くらいから何も覚えていない」。

(3)彼女は{とても・非常に・たいへん}すべすべとした綺麗な身体をしていた。

(4){とても・非常に・たいへん}美人ですね。

以上の例文を見て分かるように、「とても」は「非常に」「たいへん」と同様に、係り先の単語の状態・属性の程度のはなはだしさを特徴づけることがきますが、その使用には差異があります。筆者が3語の用法の実例を調査し、係り先の単語の品詞によって整理したところ、3語は共通して形容詞、動詞を修飾する用法が中心であるが、「とても」は形容詞、「非常に」「たいへん」は動詞に偏って見られるという結果が得られています。更に形容詞を属性形容詞と感情形容詞に分けると、「とても」が形容詞に偏っているのは、感情形容詞の力が大きいということが分かる、という結果も得られています。また、動詞との共起関係について見てみると、3語は共に感情表現を深くかかわりを持っていることも述べられています。そんな中でも例を見ていくと、「非常に」「たいへん」が「とても」に比べて客体化された感情表現をあらわしやすく、相対的に「とても」と棲み分けて使用される傾向がうかがわれています。これの例として、お礼やお詫びには「とても」が使用されにくいことが挙げられています。

これらのことを踏まえ、森下は「とても」は話し手を中心とした感情の発露と関わりあうこととを示し、「表出」といったムード性をもつ単語である、とまとめています。

以上が要約です。「とても」「非常に」「たいへん」の3語とも、文語的で、口語で使用した場合には改まった丁寧な表現、ということになると思います。「とても」を研究するにあたって、数ある程度副詞の中からあえて「非常に」「たいへん」を選ぶことによってより細かい部分での比較が可能になっていると感じました。個人的にはこの論文を受けて、「すごく」や「超」なんていう口語でよく使用される程度副詞にも今後触れてみたいと思いました。

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