昼ゼミ3年の菅野です。続けざまですが論文をもうひとつ紹介していきたいと思います。
今回私が読んだ論文は星野祐子(2008)「コミュニケーションストラテジーとしての引用表現―発話末の「みたいな」の表現効果―」お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科人間文化創成科学論叢11 p.p.133-142です。この論文では主に発話末の「~みたいな。」に焦点をあてています。そして、この「~みたいな。」で終わる発話で導かれる内容が会話表現としての性格を持っているか否かについて考察している論文です。以下は要約になります。
まず、星野は「~みたいな。」の前の内容がどのようなものであるかを大きく3つに種類分けをしている。① 引用部分の内容が元々話し手に属する内容である場合②引用部分の内容が元々聞き手に属する内容である場合 ③ 引用部分の内容が元々聞き手に属する内容である場合 そして大きく分けたこの3つからさらに種類を細かく派生させ、それらを例文を織り交ぜながら説明している。まず①の引用部分の内容が元々話し手に属する内容である場合はここから3つに派生している。以下は例文だ。
①自身の過去の心的状況を生き生きと描写する「みたいな」 「○○先生―!みたいな」 ② 自分の主張をわかりやすく述べるための説明のストラテジーとしての「みたいな」 「文学部のキャッチコピーでしょ、他学部見て、俺らここ違うなみたいな」 ③ 主張を和らげる「みたいな」 (5)「文学部行ってなんかどうなるの?将来、みたいな」
以上の例文から、星野は、これらの「~みたいな。」はいずれも話し手の内なる想いや意見を、聞き手に効果的に伝達することを意図して用いられていると主張している。次に②引用部分の内容が元々聞き手に属する内容である場合の「~みたいな。」は補足説明としての役割を担うと主張している。以下はその例文だ。
A「キャッチコピーかー、初心者用文学部?」 B「そっちで攻めるなら、入ってもそんな厳しいことありませんよーみたいな」 A「なるほどなるほど」
この例文から星野は話し手以外の者が提示した先行内容に十分の理解が得られなかった内容について、補足したり具体例を付け足す際に「みたいな」が効果的に用いられているとしている。最後に③の引用部分の内容が元々聞き手に属する内容の場合は2つに派生させている。以下はその説明と例文だ。
①イメージを会話参加者間で共有させる「みたいな」 A「誰か言っていたよね、なんだっけ、つめが甘いみたいな」 B「あー言われた言われた」 ② 第三者的立場を借りることで真意を伝える「みたいな」 A「クーラーはないけど実践力はあります」 B「いいじゃんいいじゃん」 C「でもクーラーないのかー、みたいな」 A「だよね、やっぱりクーラー消して」
①の例文は会話参加者全員がきいたはずの内容をふたたび共有するに至った場面である。過去の発話の完全な再現ではないが、イメージを共有することが重要と星野は主張している。また、②の例文は直接的には伝えにくいことを第三者の発言の形をとり、さらに「みたいな」笑いを誘いながら伝達意図をかなえている。厳密性を問わない「みたいな」の性質が発話提示に関する精神的な負担の軽減につながるのではないかと考えている。
以上が論文の要約です。この論文から、「~みたいな。」の1つの発話から様々な意味に分類できることが分かった。自分の卒業論文とは関係がないテーマだが、大きく分類させてから派生させる方法など参考になった。