こんにちは。夜ゼミ2年米光です。図書館ツアー以来に大学の図書館行ってみたのですが、地下の独特な匂いを思い出しました。この匂いは地下に通い詰めたら慣れるものなのか気になったので、これからが楽しみです。(笑)
さて、今回は以下の論文を要約しました。
近藤優美子(2019)「副詞的要素”ほぼほぼ”について」『待兼山論叢』53巻、pp.63-80、大阪大学文学会
この論文は、“ほぼほぼ”を“ほぼ”に置き換えることができない用例がある理由を探るため、副詞“ほぼ”を2つ重ねた“ほぼほぼ”を,統語的用法と意味的用法の2つの側面から“ほぼ”と対照している。そして、“ほぼほぼ”と“ほぼ”を対照した結果,統語的にも意味的にも“ほぼほぼ”は“ほぼ”よりも用法の範囲が広いと主張している。
まずは、統語的用法の対照をしている。“ほぼ”の用例は以下の通りである。
(1) a.数量:木星の直径は地球のほぼ十一倍,質量は大略三百倍
b.状態:十四日の月はほぼ完全な円に近い
c.行為の結果:事件のあらましはほぼ了解した
d.行為の進行状況:授業もほぼ終わりに近いころ,突然大きな地震が襲った
ここから、名詞,形容詞, 形容動詞,動詞を修飾することが分かる。
続いて、“ほぼほぼ”の用例は以下の通りである。
(2)お話し合いの中でいい日が見つかることが{ほぼほぼ/?ほぼ}です。
(3)ってもやっぱり{ほぼほぼ/*ほぼ}は宮地のおかげです, ありがとう最高だよ
(4)まずは成長著しい枝を剪定ばさみでカットし,大まかに形を 決め,そのあとバリカンで大まかに刈り込み, {ほぼほぼの/ *ほぼの}形を作らせていただきました。
(5)(筆者注:準備の)ほぼほぼを一人でやったのとちょうど引越し時期で重なったんで冗談抜きで本当に大変でした
(6)胃の調子が復帰しないので今日はほぼほぼにして寝マース
ここから、“ほぼほぼ”には“ほぼ”の全ての統語的用法があること、 “ほぼほぼ”には“の”を伴う連体修飾用法や述語用法,単独で項になる用法など“ほぼ”にはない名詞的な用法があることが分かる。
次は意味的用法の対照だが、統語的用法との関係も整理するため次の4つから記されている。
1.“ほぼ”と統語的用法が同じ“ほぼほぼ”には,“ほぼ”の全て の意味的用法があるか
2.“ほぼ”と統語的用法が異なる“ほぼほぼ”には,“ほぼ”の 全ての意味的用法があるか
3.“ほぼ”と統語的用法が同じ“ほぼほぼ”には,“ほぼ”にはない意味的用法があるか
4.“ほぼ”と統語的用法が異なる“ほぼほぼ”には,“ほぼ”に はない意味的用法があるか
ちなみに、対照に用いる“ほぼ”の意味的用法は次のようにしていた。
- 数値の近似
- 性質・状態の近似
- C 十全性の近似 C-1 被修飾語の明示
C-2 被修飾語の非明示
4. 動的な事態の完成への近似
以下は対照結果である。
“ほぼ”と統語的用法が同じ“ほぼほぼ”には,“ほぼ”の全ての意味的用法がある。それに加えて独自の意味的用法があり,「被修飾語が表す範囲内にあるが,その被修飾語が表す極限にはない」ことを表している。
“ほぼ”と統語的用法が異なる“ほぼほぼ” には,“ほぼ”の全ての意味的用法があるわけではない。そして、用例は「十全性の近似」にほとんど限定される。また、それ以外に独自の意味的用法が2つあり、①“ほぼ”の「性質・状態の近似」用法の被修飾語が明示されない用法,②「主体の状態が許容できる程度にある」ことを表す用法である。
このように、“ほぼほぼ”と“ほぼ”を対照した結果,統語的にも意味的にも“ほぼほぼ”は“ほぼ”よりも用法の範囲が広いことが明らかになっていた。
要約には論文に載っていた用例をそこまで載せなかったが、この論文では対照において一つ一つ用例を挙げていたので納得することができ分かりやすかった。私も用例を挙げて説得力を高めることができればよいと思った。