こんにちは。夜ゼミ2年の矢内明莉です。 最近は寒くなってきたので、毎日ショッピングサイトで冬服を眺めています 冬は着膨れしやすいので洋服選びが大変です… 今回私が紹介するのは、 中井精一(2005)「日本語敬語の地域性」『日本語学』(明治書院)24巻9号p110‐123 です。 この論文は、筆者が育った近畿地方と東北地方では祖父母の呼称が異なることから、言葉遣いと地域社会について研究したものです。 筆者は特に尊敬表現について以下のように考察しています。 ①西日本の尊敬表現は基本的に動詞+助動詞の形 ②東日本にも近畿地方にも無敬語地域が見られる ③東京では尊敬表現が見られる(無敬語地域のなかの言語島) 特に②については、中央日本語が伝わりやすいとされる近畿地方でも無敬語地域が見られるため、近畿から遠いゆえに中央語が伝播しなかったことで無敬語地域が生まれたとは考えられません。この点から、「頻繁にもたらされた敬語情報を各地域であえて受容しなかった」と考えることが出来ます。 また③については、江戸語が上方語の影響を受けて成立したため、周辺地域とは異なり、西日本なみに発達した敬語使用地域となったのではないかと考察しています。 中央語の敬語には、話し手の評価・感情が待遇表現形式を決定する場合に優先されることも分かりました。 評価・感情がプラス→「ハル」あるいはアル系動詞 評価・感情がマイナス→「ヨル」「トル」 敬語行動に関与する要因は様々ありますが、中央語においては社会的ファクターよりも心理的ファクター(その人物に対する心情・評価)を優先していると考えられます。上の表で注目したいのは、京都がどちらも「ハル」形だという点です。 京都では、身分の上下に関係なく市民間でも丁寧な言葉遣い(身内尊敬用法)をする傾向があり、何事も婉曲に表現しなければならないのが原因であると考えられています。 今回取り上げた論文では、各地の敬語表現になぜ差が生まれるのかについて深い考察がされていました。特に、京都独自の婉曲表現は東日本に住む私にとって嫌味のように感じられることもあるのですが、京都では敬意を含んだ言い回しであるという点がとても興味深いと感じました。しかし、京都で身内尊敬用法が採用されるようになった要因が本文中で示されていないため、どうして敬語表現に地域差が生まれたのかという点についても考察する必要があると考えます。