補助動詞「テモラウ」

こんにちは。夜ゼミ2年の広瀬です。先月に二十歳になりまして、先日高校の友達から誕生日プレゼントをもらいました。ちょっと高そうな蜂蜜でした。大事に食べたいと思います。

今回要約するのは以下の論文です。

山口響史(2015)「補助動詞テモラウの機能拡張」『日本語の研究』第11巻4号 pp.1-17(武蔵野書院)

〇要旨

近世のモラウ・テモラウを観察し、①迷惑を表す用法と➁(サ)セテモラウの成立プロセスを明らかにする。

〇モラウの歴史

 モラウは中古から用例が見られるが、現代語におけるモラウ文の主語が他から何かを「受け取る」という、人称制約を伴う意味とは異なる用例である。

(1)独りむすめをもたれて、人がもらへどもやらいで(狂言,虎明本,上376)

 この例文からは、モラウは「人」や「方々」(モラウ文の主語、三人称)が娘を「乞い求める」もののやらないと解釈できる。

→大局的に見て、「乞い求める」意味から「受け取る」意味へ、話し手が受け取る意味へと変化している。

近世のモラウは以下の2タイプに分けられる

・Aタイプ…主語が与え手に対して「乞い」、対象物を受け取るもの

・Bタイプ…主語が与え手に働きかけず、与え手のどうさの結果対象物を受け取るもの

〇テモラウの歴史

<後接語>

意志・願望表現

・中世末期…80%以上を占める

・近世後期…25%に満たない

→時代を経るにつれて低下している

<受け手の働き方>

中世末期の用例は18例存する。これをA‘タイプとB’タイプの2タイプに分けると、中世末期の用例はすべての用例がA‘タイプの用例である。

・A‘タイプ…主語が事前に事態の参与者に対して働きかけ、事態が生起するもの

・B‘タイプ…主語は事前に事態の参与者に対して働きかけず、与え手を起点として生起した事態の影響を受けるもの

 近世前期からはB‘タイプが見られるようになり、中世末期から近世前期にかけてA’タイプ>A’タイプ+B‘タイプという意味機能の拡張が捉えられる。

<前接語>

他動詞の用例はどの時期も一貫して見られる。一方、自動詞の用例は中世末期には見られず、近世前期から見られ始める。

〇(サ)セテモラウ

 (サ)セテモラウ文の構造について近世後期の例から考えてみると、これらの例は「XハYニ(Zヲ)V(サ)セテモラウ」という構造を持っていることがわかる。そしてテモラウに前接する使役文の構造は「YハXニ(Zヲ)V(サ)セル」となる。

〇私見

 中世末期から近世後期にかけてのへのモラウ・テモラウ文の意味の変化について、大変わかりやすく示されていると感じた。一方で、それぞれデータの元となった書物の数がいくつであるかの判断が難しく、例の数がもう少し多ければ説得力が増すのではないかと考えた。また、要旨には迷惑を表す用法と(サ)セテモラウ文の成立を明らかにするとあったのだが、モラウ・テモラウの歴史や意味の移り変わりについて重点を置いて書かれているように感じた。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です