現代中国語における日本語からの借用語の基本語化―宅の考察を通じて―

 こんばんは、昼ゼミ2年の陳です。先日、久しぶりに新宿にある添好運を食べました。とても美味しかったです。都内で飲茶したい人にオススメです。

 今回要約するのは以下の論文です。

呂雨珊(2019)「現代中国語における日本語からの借用語の基本語化―宅の考察を通じて―」『ニダバ』 (48), 41-49西日本言語学会

 この論文は現代中国語における「宅」という日本語からの借用語に着目し、「宅」の使用状況と「宅」が現代中国語に定着し、さらに基本語となる過程を考察した。

 日中両言語における「宅」の意味は同じく、主に「住所」が最も基本な意味である。中国語における「宅」は2012年『現代漢語詞典 第六版』で「家に引きこもる」という意味が初めて記載された。新語の「宅」は日本の「御宅」を語源とする語であり、意味のみならず、品詞性も変化している。「宅」は準接辞として、

   ①「宅+〇〇」→「宅男」「宅女」→「家、またはある場所にずっといるのが好きな者」

   ②「〇〇+宅」→「技術宅」→「ある分野に通暁している者」

という二種類の意味を持っていて、造語力が強い名詞性準接辞として数多くの新語を作り出している。

 また、現代中国語における新語「宅」はさらに動詞、形容詞まで使用範囲が拡大している。日本語の「熱中」という意味合いが次第に薄く、「(家の中などに)引きこもる」意味を表している。

 現在、「宅」を語源として形成された新語は新聞記事でも数多く使われており、中国で基本語化している。その要因として筆者は以下の二つの要因を指摘した。

  ・ACG文化を代表とする日本文化の受容という社会・文化的要因

  ・既存の表現は人々の需要を満たされていないという言語・心理的要因

 現代中国語には日本語からの借用語が多いですが、そのまま漢字+西洋からの新しい概念や、白話文運動の原因か、とても借用語とは思えないほど広く使われています。現代中国語における日本語借用語といえば「宅」をはじめのオタク用語が典型例だと感じます。

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