傾向を表す接尾語「~がち」「~ぎみ」

こんばんは。昼ゼミの滝沢です。先日無観客の中で試合が行われました。歓声のある試合が懐かしいです。

以下の論文の要約をしました。

趙 海城(2016)「傾向を表す接尾語「~がち」「~ぎみ」について』、『明星国際コミュニケーション研究』、8号、pp.31-49

 (1)彼女は遠慮がちにたずねた。

 (2)少し風邪ぎみで咳が出る。

 (3)少し疲れぎみで仕事がはかどらない。

 (1)の「遠慮がち」は「遠慮ぎみ」に置き換えられるが、(2)(3)は置き換えると意味が大きく変わる。筆本論文はコーパスを使用し「がち」「ぎみ」の意味的共通点と相違点を明らかにすることを目的としている。

・「動詞+がち」

 上接する動詞310個の内上位32位までを見ると「忘れる、遅れる、見落とす」といった「人間にとってマイナスな出来事」ととらえる事態を表す動詞が多い。一方「思う、考える、夢見る」といった動詞は、動詞事態にマイナスイメージはないが、(4)のように「がち」が付くことでマイナスイメージは付与されているとしている。

 (4)売茶翁と聞くと、商家の出身のように思いがちだが、実はそうではない。

 (5)共働き新婚夫婦にありがちなのが、余裕のある収入に早々と家を買うケース。

 (6)うっかり水やりを忘れがちですが、浸透圧の関係で…。

 (4)~(6)をから「がち」に上接する動詞は、目の前にある一時的な状態でなく「繰り返し起こしてしまう。頻繁にそうなってしまう」傾向にあると結論付けています。

・「助動詞+がち」

 (7)a.夜、爪を切ると縁起が悪いと言う。

      b. 夜、爪を切ると縁起が悪いと言われている。

      c. 夜、爪を切ると縁起が悪いと言われがちだ。

 受身助動詞「~られがち」が520例とヒットしている。(7ab)から受身化には動作主を不問にする働きがあり、これが一般的な事態叙述につながりやすい。この機能と「~がち」の反復させることで一般的な事態を表す性質が意味機能的に合致しているため、受身助動詞が「~がち」に上接しやすいとしている。

 同時に「~てしまいがち」でも293例ヒットしていることも「~てしまう」が示す予想外、残念というニュアンスが「~がち」の表す「人間にとってマイナスな出来事」と合致しているからだと説明している。

・「名詞+がち」

 57個の名詞からなる「上接名詞+がち」の表す意味を3グループに分けることで完結している。

グループ➀:【病気、留守、便秘、不足…】

 この類は名詞の示す状態が頻繁になってしまうことを示す。さらにその状態は一般に好まれないマイナスイメージを持っている。

グループ②:【遠慮、伏し目、夢見…】

 この類は名詞が示す状態に傾いている状況を示す。➀と違い名詞自体に一般的なマイナスイメージは感じられない。

グループ③:【黒目、山、石…】

 この類は名詞の示す面積が優勢な状態を示す。②と同じように名詞自体に一般的なマイナスイメージは感じられない。

・「動詞+ぎみ」

 (8)最近運動不足で少し太りぎみです。

 (9)a.「ええ、もちろん」女性はいくぶん慌て気ぎみに答えた。

      b. 「ええ、もちろん」女性はいくぶん慌てて答えた。

 「~ぎみ」に上接する動詞は171個と「~がち」に比べて少ない。「~がち」で多く見られた「成る、有る、思う」は1~2例ほどしか見られず、一方で「太る、痩せる、上がる、減る」といった変化幅を表す動詞、「疲れる、慌てる、抑える」などの身体的、精神的状態を表す動詞が多く見られた。それに伴い「やや、少し、かなり」といった程度副詞とよく共起していた。(8)(9a)を例に「動詞+ぎみ」は一時的で具体的な状況の変化を考察、体感し、主観的に述べているとしている。また(9ab)のように「~ぎみ」がつくことで断定を避け、語気を和らげる効果があることも指摘している。

・「名詞+ぎみ」

 (10)寒暖差が大きくて、少し風邪ぎみです。

 (11)農林水産業は若干過剰ぎみという見方としておられます。

 「~ぎみ」に上接する名詞は405個と「~がち」に比べてはるかに多く、「風邪、緊張、興奮」といった身体面、精神面の具体的状況を示すものと、「過激、下降、オーバー」といった量的に基準から離れている状態を意味する名詞が多くヒットした。また「動詞+ぎみ」と同様、程度副詞を共起することが多い。性質については(10)(11)を例に「動詞+ぎみ」と同じように一時的で具体的な状況の変化を考察、体感し、主観的に述べるものと、語気を和らげる効果あるとした。

 この時点で「~がち」が後接すると一般的な事柄を客観的に述べ、「~ぎみ」が後接すると具体的な状況の傾向を主観的に述べると相違点を示している。

・「両方とも具体的な状況」

 (12)僕は机に向かい、ぼんやりとしているところだった。「穂高さんからだったよ」彼女は少し遠慮ぎみに言っ

    た。

 (13)共産党は少しずつ攻勢を強めていたが、それでも最初は遠慮がちだった。

 双方とも具体的な状況をしめす場合は、(12)(13)を例に「~がち」はしばらく繰り返しているニュアンスを持ち、「ぎみ」は一時的な具体的な状態を示すと指摘した。

最後に「~がち」は出来事が繰り返し行われ、頻繁にある状態を示す。マイナスイメージを付加する。グループ②の名詞に後接する場合は名詞の示す状態に傾いている状況を示す。グループ③に後接する場合はその面積が優位にあることを示す。

「~ぎみは」は一時的で具体的な状況の変化を主観的に述べる。断定を避け、語気を和らげる、と今回の調査で明らかになった相違点を記している。

先行研究も取り上げながら付け加える形で新たな相違点を述べていてとても参考になりました。同じように似た接尾語の相違点を示す論文はいくつもあるが、どれも同じような形式にあるのかなと思い始めました。

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