「ボク少女」の言語表現—常用性のある「属性表現」と役割語との接点—

こんばんは。昼ゼミの田久保です。

いつの間にか筆箱から蛍光ペン1本とシャーペン2本が消えていました。帰ってきて欲しいです。

さて、今回は次の論文を要約しました。

西田隆政(2012)「ボク少女」の言語表現 —常用性のある「属性表現」と役割語との接点—『甲南女子大学研究紀要. 文学・文化編』第48巻 pp.13-22 甲南女子大学

要点

「ボク」を使用する少女キャラクターをボク少女と」呼ぶ。このとき使用される表現を、常用性のある「属性表現」として検討し、「常用性」が重要な要素であると主張している。

「属性表現」とは役割語(博士語、お嬢様語など)のように人物の全体像を表すのではなく、キャラクターの性格などの部分的な側面と関連づけられる言語表現である。西田(2010)では、この特徴を次のa~fの6つ提起した。今回はその特徴に「ボク少女」の言語表現を照らし合わせている。

a  現実世界でおこなわれる表現とは直接むすびつかないというヴァーチャル性をもつ。/(役割語と共通の特徴)…「ボク少女」にも当てはまる。

b  特定の言語表現とさししめす人物像とに関連性がある。/(役割語と共通の特徴)…「ボク少女」にも当てはまる。

c  言語表現がさししめすのは人物の全体像ではなく部分的な属性である。/(属性表現のみの特徴)…「ボク少女」の立ち位置によって変わる 。

d  言語表現のさししめす属性は現実世界における存在の裏づけがない。/(属性表現のみの特徴)…「ボク少女」にも当てはまる。

e  「属性表現」の使用されるキャラクターには性格の統一性がなくキャラクターの破綻ともとれるような例がある。/(属性表現が持つ可能性がある特徴) …「ボク少女」にも当てはまる。

f 「属性表現」は一般的にしられているものではないもののその属性自体が社会的な職業として認識されることで役割語となる可能性がある。/(属性表現が持つ可能性がある特徴) …「ボク少女」にも当てはまる。

「ボク娘」の言語表現の特徴

「ツンデレ」のような常用性のない(場面や立場などに左右される)と属性表現とは異なり、「ボク少女」の一人称の「ボク」は、役割語のような常用性がある。しかし、「ボク少女」が表すのはそのキャラクターの性格的特徴の一部であるという点が、役割語と異なる。

→常用性があることで、キャラクターの印象に大きな影響を及ぼす。

※ただし、「ボク少女」が成立する前提には「ボク」を使用するのが男性(少年)であるという共通の認識が必要である。少なからず「ボク」を使用する少年との関係があると思われる。

〈自分の意見〉

この論文では、表現の常用性と言う視点から属性表現を考察している。この視点はぜひ参考にしたい。

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