程度副詞の評価性をめぐって

 こんばんは。夜ゼミ2年の米光です。市民プールでバイトをしているのですが、夏の期間は幼児用の外プールもあるので毎年肌がとても黒くなります。しかし、最後の方は天気の悪い日が続きよく雨が降ったため、あまり日焼けせずに済みました。みなさんは暑くて日に当たり続ける監視か寒い上びしょ濡れになる監視、どちらがまだいいですか?(笑)

さて、今回は以下の論文を要約しました。

田和真紀子(2011)「程度副詞の評価性をめぐって」『宇都宮大学教育学部紀要』61号、pp.25-36、宇都宮大学

 この論文は、先行研究から程度副詞の分類の流れを理解し、程度副詞の程度性と評価性との関係を整理している。さらに、程度副詞の評価的側面に再度注目し、評価的な性質が強い程度副詞の意味・機能の特徴を明らかにしている。

程度副詞の評価性と程度性

1983年の先行研究①

・陳述的な評価性

・ことがら的な程度限定性

先行研究①での程度副詞は、この2つの性格をもつものとして位置づけられている。

1990年の先行研究②

程度副詞の体系

先行研究②では、「評価系の程度副詞」は主観的な内面の価値尺度に基づく品定め―すなわち「評価」―を表すとしている。

2002年の先行研究③

程度量の副詞の機能分担

先行研究③の分類から、極端な領域は程度・量ともそれぞれ単一機能の「純粋程度の副詞」 と「量の副詞」が担当しているのに対し、「量程度の副詞」はその名の通り程度と量の両方で使用され、極端な領域以外を広くカバーしていることがわかる。

 本稿における程度副詞の分類

主張・根拠

・量系の構文において

「かなり類」「多少類」…量系の用法と程度系の用法の両方を持つ

◎(1)この夏休みは、宿題が かなり/多少 出ている。

◎(2)この夏休みは、宿題が かなり/多少 たくさん出ている。

「結構類」…程度系の用法が最も自然で、量系の用法が代理的=より評価性の強い程度副詞といえる。

△(3)この夏休みは、 結構 宿題が出ている。

◎(4)この夏休みは、宿題が 結構 たくさん出ている。

・比較系の構文において

新しい店のほうが古い店よりも もっと/かなり/多少 はやっている。

「新しい店」と「古い店」という比較対象のうち、どちらかが「はやっている」という判断を指摘するのに、自分の中の価値尺度と照らし合わせて主観的な評価を示す「結構類」はなじみにくい。対して、「かなり類」「多少類」は〈二つの対象の比較幅〉という対象寄りで客観的な「幅の量」を表していると捉えられる⇒比較系は量系に近い性質を持っていると思われる。

・「結構類」と「かなり類」

(5)速達を使ったら、 結構/かなり 早く荷物が届いた。

(6)皆元気で 結構だ 。<結構類>

(7)何の連絡もなく待ち合わせに来ないとは 随分だ 。<かなり類>

上記の例文から分かる共通点

・程度性においてはどちらも「相当程度の領域」に属す。

・述語化する。=評価副詞に近い性質を持つということ。

(8)この味、(私にとっては) 結構 好みだ。

(9)東京で地下鉄を使いこなすのって、(私にとっては) なかなか 難しいね。

(10)この味、 かなり 好みだ。

(11)東京で地下鉄を使いこなすのって、 随分 難しいね。

(12)今日は、 かなり 暑い。

(13)息子さん、 随分 大きくなりましたね。

上記の例文から分かる違い

・「結構類」…程度系の構文に限定され、より評価性の高い用法に偏っている。

・「かなり類」…比較系や量系の構文でも問題なく使用される。

・「結構類」…自分の価値尺度の中でことがらの位置に値するかを品定め―自分視点でことがらを評価する。

・「かなり類」…相対的・客観的なことがらの程度を表す文も、どちらでも使える。

筆者は、「この夏休みは、宿題が結構出ている。」や、「新しい店のほうが古い店より結構はやっている。」という文は不自然だと述べていたが、私は不自然だと思わなかった。しかし、この論文が書かれたのは10年前なので、不自然だと思わなくなった理由が「結構」の意味や機能が変化した結果なのであればとても面白いと思った。

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