「大丈夫です」の用法拡大に関する研究-不利益を想定して気遣う言語行動-

こんにちは。昼ゼミ2年の芝﨑です。
昨日、鈴虫の音が聞でこえて、9月になったことをより実感しました。夜も涼しくて過ごしやすいので年中これくらいの気温であってほしいですね。

今回は、以下の論文を要約しました。

尾崎喜光(2016)「「大丈夫です」の用法拡大に関する研究-不利益を想定して気遣う言語行動-」『清心語文』第18号,pp52-64,ノートダルム清心女子大学日本語文学会

この論文は、対立する従来の表現の使用と対比しつつ「大丈夫」を社会言語学的観点から明らかにしている。

◎「大丈夫です」の従来の用例

⑴道を歩いていて転んだ人を見たとき
A「あっ、大丈夫ですか?」
B「あっ、大丈夫です」

◎「大丈夫です」の現代の用例

⑵食堂で店員さんから聞かれて断わるとき
A’「お茶のお代わりはいかがですか?」
B’「あっ、大丈夫です」

このように従来は、応答する場面において使われていたが、現在はこれに加え、他者からの勧めを断ったり辞退を述べたりする場面などでも使われるようになってきている。

〈調査方法〉
岡山市の20歳~79歳の男女に調査を行った。

〈結果〉
「だいじょうぶ?」
・男性よりも女性で使用者率が高い。
・60・70代では4.2%と非常に少ない。40・50代以下では約3割にまで上昇する。
「だいじょうぶです」
・男性よりも女性で使用率が高い。
・60・70代では 約1割と少なく、40・50代では約3割にまで上昇し、20・30代では約7割まで達する。
以上、現在(調査当時)岡山市で女性や若年層を中心に勢力を伸ばしてきている。

次に、岡山市以外での「だいじょうぶ」の使用状況について、先行研究を見ると、若年層になるほど数値の増加が見られ、岡山市と同じ傾向であった。しかし、男女差はほとんどない。

最後に、「だいじょうぶ」の本来の意味をふまえつつ、現在多様な言語場面において「だいじょうぶ」が使われる理由を検討する。主要な理由は、話し手が相手の不利益を想定し、その状態を気遣い解決しようという、従来なかった論理による対人配慮意識にもとづくのではないかと考えられる。応答での使用についても、自分は不利益を受けている状態だと認識した上で自分は特に問題がないと述べていると考えられる。つまり、自分の不利益や問題のある状態を想定した上で応答しているのである。
現代の若者は、友達といえども(あるいは友達だからこそ)気を遣う世代である。とりわけ迷惑をかけるということには敏感である。そのような対人意識の変化が、「だいじょうぶ」の用法の拡大と使用頻度の増加をもたらしているものと筆者は考えている。

この論文を読んで、調査方法によって回答が異なる先行研究について、どのように調査結果を分析し、比較したら良いのかを知ることができました。レポート作成で過去の調査を参考にする際は、活かしたいと思います。

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