「 重複後(畳語)している/した」について

こんにちは。昼ゼミ滝沢です。もう昼でも半袖ではいられず、思えば短い夏だった気がします。

以下の論文を要約しました。

大塚望(2021)「「重複後(畳語)している/した」について ―形容詞性接尾語辞「ぽい」「らしい」との比較―」、『日本語日本文学』31号、pp.11-29、創価大学日本語日本文学会

「子供子供する」は「子供っぽい様子」と説明され、「男らしい」は「男っぽい」と類議され、どれも似ているものと解釈されている。本論文では畳語の意味と用法を接尾語「ぽい」「らしい」と比較しながら明らかにしている。

「モノを表す名詞」

(1)a.たまごたまごしてるW玉子サンド

  b.たまごっぽいW玉子サンド。

  c.たまごらしいW玉子サンド。

(1a)に比べて(1bc)はその量の程度性が落ちていると指摘している。先行研究では「ぽい」は「期待値よりも多くの物質を含んでいる」「話者の暗黙の基準値よりも多く含む」とされている。(1b)ではたまごの絶対値が多いわけではなく、話者の基準値より多いことを示しているが(1a)では話者の基準を前提に持たず「絶対的に最大値であること」を示しているとしている。「らしい」は先行研究から「そのものの特徴や性格を十分に備えている様子」とあるように、量的な側面を述べることが出来ていない。

「色を表す名詞」

(2)a.ユナの部屋はピンクピンクしている。

   b.ユナの部屋はピンクっぽい。

   c. ユナの部屋はピンクらしい。 

(2a)ではピンク色の占有率が極めて高いことを意味している。しかし(2cb)のように「ぽい」「らしい」で言い換えることはできない。「ぽい」は先行研究からも「含有量の多さ」「性質が濃厚に抽出された状態」を表すが、(2b)の「ピンクっぽい」は「ピンクかかった」と別の意味が生じてしまい、多いと言っても最大値には至らないことを指摘している。一方(2a)の「ピンクピンクしている」はその物以上に強いこと、そのものが複数、多量に存在していることを示している。(2c)の「ピンクらしい」はこの文脈では使えない。

「属性を表す名詞」

(3)オネェオネェしてる方が好みだし面白いと思うけど…。

(3)では名詞から導き出される特徴や性質が極端に強くあらわれているという事を意味していると解釈している。属性を表す名詞の場合、「ぽい」に置き換えることが可能で、マイナスの意味がある場合は「らしい」に置き換えることはできないとしている。

接尾語が畳語と言い返している例は少ないため用法を見出すことは難しいと感じましたが、具体的な用例で分かりやすかった。一方で先行研究が数多く選出されていることで複雑な伏線が作られていて、最終的にまとめるのが困難でした。読解力を上げていきたいです。