こんばんは。2年昼ゼミの伊藤です。
ここ数日、夜が過ごしやすい気候となり夏の終わりを感じます。夏休みに予定していた旅行に行かれなくなり大学生の特権が満喫できず残念ですが、もう少し我慢をし早く安心して外出できるようになって欲しいです。
宝島 格、今仁 生美(2020)「目的と態様の「ように」について」『名古屋大学院大学論集 言語・文化篇』第31巻2号、pp.49-58
【概要】
「ように」を含む次の文は、2つの明確に異なる意味でとらえることができるといわれる。
(1)肉が焦げないように弱火で炒めてください。
(1a)「目的」肉が焦げないことが目的で、弱火で炒めればそれが達成される。
(1b)「態様」弱火で炒めたからと言って肉が焦げないわけではないので、焦げてしまう炒め方 ではなく焦げない炒め方をすることに注意する。
この論文では、「ように」の基本的性質から導かれるものとして両用法を扱うことを提案している。
日本語の「よう」の意味は、一般的に基本となるのは、「模様・様子・状態」であり、これが「比況・例示」の意味へと発展していき、さらに内容を指示する「一致・帰着」世言った関係を表すに至る。また、文脈により「推定。不確実な断定」「目標・目的」「願い・希望・軽い命令」などの機能を持つ意味になる。
この論文では、副詞接を導くもののうち、前節で述べた2つの用法「態様」「目的」に絞って問題にしている。
【考察】
次の文における用法の違いを、下記の(2a)と(2b)が示すようなスコープの違いとしてとらえる方法がありうる。
(2)馬が逃げないように手綱を(木に)括りつけてください。
(2a)[馬が逃げないように][手綱を括り付ける]
↳「手綱を括り付ける」動作事態は1つのまとまりを成して完結しており、それに「馬が逃げない」が独立して付加されている
(2b)[馬が逃げないように [手綱を括り付ける]]
↳「手綱を括り付ける」動作の内部に「馬が逃げない」が含まれており、「手綱を括り付ける」動作の内容に影響を与えるものとされる
スコープの違いは、「ように」で導かれる節の内容が、動作「括り付ける」と密接に結合しているか、結合度合いがゆるいか、の違いである。
しかし実際のところ、こうした「スコープの違い」は構造的にはっきり区別されうるものである。(2)において、「目的」と「態様」はどのように扱われるか。「ように」に2つの用法があって、これがスコープの違いとして明瞭に区別されているのであれば、「目的」用法(2a)は、「手綱を注意して括り付ける」が1つのまとわりとして独立しており、「馬が逃げないように」と無関係に意味が定まるということになるのではないか。なお「態様」用法の(2b)は、括り付ける動作の内部に、馬が逃げないこと(に対する注意)の有無が含まれており、「ように」節の内容が括り付ける動作に影響を与える解釈である。
【感想】
とても分かりやすく、また著者の主張が伝わってくる論文だと感じました。「目的」と「態様」で区別をつけながら使っている人は少ないのではないかと思います。しかし、2つの用法の間には大きな違いがあるのだということがわかりました。