日本語母語話者の独話に現れる接続詞「で」について

こんにちは。夜ゼミ2年の依田です。先週は突然の大雪で驚きました。また近い内に雪が降る可能性があるらしいので、皆さん気をつけてください。

今回は以下の論文を要約しましたので、紹介させて頂きます。
石島 満沙子,中川道子(2004)「日本語母語話者の独話に現れる接続詞「で」について」『北海道大学留学生センター紀要』第8号 pp.46-61
この論文では、接続詞「それで」とその短縮系「で」が学会発表の独話でどれくらいの頻度で使用されているかが調べられていて、さらにその意味・機能の分析がされている。

まず、石島,中川は「それで」または「で」の使われている学会発表のテキスト10編を使い、それぞれの使用頻度を調べている。

.       P1  P2  P3  P4  P5  P6  P7  P8  P9  P10  総数
「それで」   6    0     1     0    0     0   0     0   1     1    9
「で」       20  13  45  28  30   12    10    3    4    11   176

使用された総数は「それで」が9、「で」が176と大きな差が見られ、また「で」は全てのテキストが使用しているのに対し、「それで」は6つのテキストで使用されていなかったと分析している。

次に「それで」と「で」のそれぞれの意味・機能の比較をしている。「それで」の意味・機能は辞書および参考資料を使って以下の3つにまとめている。
(1)順接:前文を後文の原因と認める用法
(2)累加:前文に異なる状況を加える用法
[(3)相手の発言に対しさらなる発言を求める用法]
さらに論文内の分析対象は独和であることから(3)の用法を除外し、独和における「それで」の用法を(1)順接,(2)累加の2つとしている。

「で」の意味・機能は発表テキストに現れた176回の「で」から、どのような意味・機能で使われているかを分析し、以下の6つにまとめている。
(1)順接:前文を後文の原因と認める用法
(2)添加:前文の後に異なる後文を加える用法
(3)同列:前文の内容を後文で具体的に言い換えて説明する用法
(4)補足:全文で言及しなかった情報について後文で補う用法
(5)転換:前文の内容から転じて後文で新しい話題を導く用法
(6)対比:前文の内容に対立する後文を導く用法
「それで」の用法(1),(2)と「で」の用法(1),(2)は同じ用法だが、(3),(4),(5),(6)は「で」にしかない用法であり、「で」の方がより多様な機能を持っているという事が分かった。石島,中川はこの多様性が「で」の使用頻度を高めている一因なのではないかとしている。

また、この論文では「で」と他の接続表現が重ねて使用される、接続詞の二重使用にも少し触れられていた。接続詞の二重使用として上げられた例では、「で」に後続する接続詞が前文と後文の関係を示していて、「で」が無くなっても意味が通じるものがあった。このことから石島,中川は、接続詞の二重使用によって「で」の機能を弱めているのだと考え、寧ろこの場合の「で」は接続詞の意味と共に、単に発話者の語調を整える機能として使用されているのではないかとしている。

まとめとして石島,中川は、学会発表の独和という公式的な場で短縮系の「で」の使用頻度が高かったのは意外だったが、多様な意味・機能を持つ「で」の方が発話者が前文と後文をつなげる上で使用しやすいのだろうとした。また接続詞の二重使用については、「で」の接続詞としての機能が弱まっている可能性があるとし、これは発話者の語調を整えるという「で」の新しい機能を示唆しているのではないかという考えを示した。