「赤のN」という表現の成立条件について

こんにちは。昼ゼミの石井です。寒い日が続いたためか体調を崩してしまい、自己管理の大切さを痛感しています。

さて今回は、こちらの論文を要約しました。

木下りか(2005)「色彩を表す名詞の連体修飾用法 : 「赤のN」と「赤いN」」『大手前大学人文科学部論集』6号,p.p.29-39

この論文で筆者は、色彩名詞と色彩形容詞の関係を、「赤の/赤い」に絞って取り上げ、「赤のN」という表現を使用する上での条件を考察しています。

まず先行研究として、沢田(1992)を紹介しています。沢田の論文では、名詞修飾の機能を「指定」だとしています。たとえば「赤の太陽」という表現は、様々な色の複数個の太陽が存在し、その中から特定の太陽を選択するという状況を必要とする、ということです。しかし、太陽はふつう赤いものしか存在しないため、「赤の太陽」という表現は不自然だと述べています。

しかし筆者は、名詞修飾の機能である「指定」は、様々な色のNの中から特定のNを選んで示すという意味ではなく、様々な色の中から特定の「赤」という色を選んで示す、という機能だと述べています。

筆者が指摘している、「赤のN」という表現が成立するための条件を、例文を示しながら紹介します。

(1)*東の空に赤の太陽が昇ると、一日が始まる。

(2) その衣装は白地で作られていましたが、表には赤の太陽の絵、後には緑の太陽の絵がありました。

(3) ラベルがオレンジ地に赤の太陽を象ったいかにも太陽の国メキシコのビールといった感じである。

これらは全て「赤い太陽」という表現を使用した文ですが、(1)のみ不適格な表現としています。(1)の文に出てくる太陽は自然物であり、赤以外の色が存在しえないため、様々な色の中から特定の「赤」を選ぶという機能と矛盾してしまうからです。(2),(3)の太陽は絵、つまり人工的に着色されたものであるため、文中に明記されていなくても、別の色の同一物の存在が想像されるため、「赤のN」が使用できる、と述べています。

また、Nが自然物であっても、それが典型的な赤色をしていて、なおかつ文中に対比されるような別の色が登場する場合は、「赤のN」と言えるともしています。

(3)*東の空に赤の太陽が昇ると、一日が始まる。((1)の再掲)

(4)*例えば「赤のルビー=情熱」というように1つの宝石から感じ取るイメージや印象は不思議と皆共通し、その為か宝石言葉も各国でほとんど違いがありません。

(5) 青のサファイアと赤のルビー。

太陽は、赤とよく表現されますが、夕焼けなど特別な場合を除き、厳密には赤とは言いがたい色をしています。しかし、ルビーは典型的な赤色をした自然物で、赤色以外のものは存在しません。また、同じ「赤のルビー」でも(4)と(5)で許容度が違うのは、(4)には比較対象である「青のサファイア」があるのに対し、(5)には比較対象がないからだとも指摘しています。

つまり、以上のことをまとめると、「赤のN」が成立するのは、Nが人工物である場合と、Nは自然物であるが、典型的な赤色をしており、かつ文中に比較対象が明記されている場合の二種類がある、ということになる、と筆者は述べています。

参考文献:木下りか(2005)「色彩を表す名詞の連体修飾用法 : 「赤のN」と「赤いN」」『大手前大学人文科学部論集』6号,p.p.29-39